アサーティブな態度を身につけるには (アサーション)

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前回は「アサーション」という、自分と相手の両方を大切にした、率直で誠実なコミュニケーションの方法をご紹介しました。アサーションは職場だけでなく、家庭や学校、地域社会でも役立つ実践的な考え方です。しかし、今ひとつ理解しにくい、実践しづらいと感じるひとも多いようです。それはなぜでしょうか。

理由(1) 「非合理的な思い込み」にとらわれている

わたしたちは知らず知らずのうちに、「人は~であるべきだ」という考え方にとらわれています。このような考え方が強すぎると、思考や行動が大きく制限され、素直なコミュニケーションができなくなります。

(1) 人は誰からも愛され、人から受け入れられるようであるべきだ。
(2) 人を傷つけてはいけない。そのような行為は非難されるべきだ。
(3) 人は常に完璧でなくてはならず、失敗をしてはいけない。
(4) 思い通りにことが進まないことは致命的なことだ。
(5) 危険や害になりそうなものに、人は深刻に心配をするものだ。
(6) できないと言うことは、能力がないということだ。
(7) 上司や親、目上の人の命令は断ってはいけない。

例えば(1)や(2)の考え方に強く縛られていると、他人と異なる意見を言いにくくなります。(3)や(4)の思い込みが激しいと、失敗を恐れるあまり、自分を強く責めたり、他人の小さな失敗まで気にするようになります。(4)や(5)の考え方が強すぎると、思い通りにならないことがあったとき、イライラして相手を責めることになります。(6)や(7)の思いこみが強いと、職場で大きなストレスを抱えることになるでしょう。

こうした考え方のことを「非合理的な思い込み」といいます。非合理的な思い込みに対処するには「そうであるにこしたことはないが、そうでないこともある」と考えることです。例えば「他人を傷つけないにこしたことはないけれど、傷つけてしまうこともあり得る。その時は誠意を持って、修復に心がければよい」と考えます。非合理的な思いこみを、建設的で合理的な考え方に変えると、ずいぶん気持ちが楽になります。

理由(2) 自分の感情をあまり意識していない

アサーションとは人間の感情を大切にするやり方です。しかし私たちは、ふだん、自分自身の感情をあまり意識していません。例えば腹を立てているときに、「何に対して」「なぜ」怒りを感じているのかを考えないまま、感情を押し殺したり、怒りを相手にぶつけたりすることも多いようです。

「何となく気が進まない」「何となく苦手だ」という気持ちは、最初に身体を通じてあらわれます。伏し目がちになったり、身体が硬くなったり、顔がこわばったり、口の中が乾いてきたりします。そんな身体のサインを感じたら、自分の感じている「何となくイヤだ」という気持ちを、無理に否定しないで、ストンと心に落とすようにします。身体の声に耳を傾けると、自分の気持ちを理解しやすくなります。

自分の感情と、それを引き起こしている客観的な状況とを切り離して考えることも効果的です。例えば、自分が本を読んでいる横でAさんがギターを弾いています。その時「Aさんがうるさい」「ギターの音がうるさい」と考えるのではなく、「いま、Aさんがギターを弾いているのを聞いて、私は読書に集中できず、いら立ちを感じている」と考えるのです。なるべく具体的に、客観的に状況を記述すると、その後の交渉がスムーズに進みます。

まとめ

アサーティブな態度を身につけるには、非合理的な思いこみにとらわれないようにすること、自分の気持ちの変化に気づくこと、自分の気持ちと、それを引き起こしている状況を別々に考えることが大切です。

次回は、他人に何かを提案したり、意見の異なる相手と交渉する場面で役に立つアサーション・スキルについて説明します。

参考文献:『アサーショントレーニング ~さわやかな「自己表現」のために~』
(平木 典子、日本・精神技術研究所)
『NOを上手に伝える技術』(森田汐生、あさ出版)

ストレスマネジメントの講演を行いました (Q&A)

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昨日、都内某所で「ストレスマネジメント」の講演を行いました。メンタルヘルスをテーマにシリーズ化のお話をいただき、「ストレスに強い考え方」「職場のメンタルヘルスケア」「アサーティブなコミュニケーション」の3つのタイトルで、計6回の講演を行う予定です。

今回は「今すぐできる、ストレスが小さくなる5つの考え方(1)」で取り上げたセルフケアのご紹介です。定員20名の会議室はすぐにいっぱいになり、会場のレイアウトのおかげか、途中の実習のおかげか、それともクッキーのおかげなのか、和やかな雰囲気で進めることができました。参加型の研修としては成功だったかなと思います。

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そうそう、今回ははじめて液晶テレビを使ったプレゼンを行いました。ケーブルをMacBookにつなぐだけで解像度もぴったり。1366×768ピクセルの美しい画面に映し出されたスライドは輝いて見えました。ワイド画面のスライドってかっこいいなあ。うーん、欲しくなるなあ(笑)。

参加者の声(アンケートより抜粋)

  • いつも何かに押されているような、漠然としたストレスを感じていたのですが、それがどこから来るのか理解でき、対処するヒントもわかりました。
  • 自分のストレスとどう付き合うべきか、アプローチが分からず困っていました。具体的な事例の話はとても参考になりました。
  • 実習の後のディスカッションで、物事にはいろいろ多面的なとらえ方があるのだと気づきました。
  • 自分は否定的な考え方をしがちだと思っていましたが、それはごく一般的なことで、周りの人も同じような考えをもっているのだと知り、気が楽になりました。
  • ストレスは避けられないものですが、考え方を少し工夫することでストレスの感じ方が小さくなるのなら、やってみようと思いました。

 

参加者の質問(アンケートより抜粋)

【質問】いつも明るくふるまってはいますが、ストレスにうまく対処しているというより、ストレスの元になる感情をむりやり抑えつけているような気がします。どうしたら自分の感情をうまく表現できるのでしょうか。
【お答え】「イヤだな」「苦手だな」「気が進まないな」という感情が生じると、顔がこわばる、伏し目がちになるなど、身体にサインが出ます。身体の声に耳を傾けると、自分の気持ちを理解しやすくなります。自分の感情や気持ちに気づき、それを素直に表現するための考え方や方法については「アサーティブなコミュニケーション」の回でお話します。アサーションの記事も参考になると思います。

【質問】ストレスに悩む部下がいるのですが、どこまで突っ込んで話をすればいいのか、本当に力になれるのかどうか、悩んでいます。
【お答え】「援助者」として関わるときは、自分の立ち位置と役割、できることの限界をしっかり認識することが大切です。部下の話をよく聴いているうちに、解決の糸口が引き出せることもあります。業務に影響が出ているような場合は、病気の可能性も考えて産業医や保健師に相談します。詳しくは「職場のメンタルヘルスケア」の回で取り上げます。

コミュニケーションの3つのやり方 (アサーション)

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言いたいことをはっきり言えず、後で悔やんだことはありませんか? 逆に、強い口調で言いすぎてしまったと、後で気まずい思いをしたことはありませんか? 自分と相手の両方を大切にしながら、自分の意見を率直に伝えるコミュニケーションのことを「アサーション」と言います。

コミュニケーションの3つのやり方

私たちはみんな、職場や家庭で気持ちのよいコミュニケーションを交わしたいと思っています。しかし、自分の意見を素直に表現することは、思っている以上に難しいものです。人間関係におけるコミュニケーションのやり方は、大きく次の3つに分けられます。

(1) 自分のことだけを考えて相手を踏みにじるやり方
(2) 常に自分よりも相手を優先してしまうやり方
(3) 自分のことも考え、相手のことも配慮するやり方

私たちは立場や状況によって、この3つのやり方を使い分けています。
例えば次のような場面で、あなただったら、どのやり方を用いるでしょうか。

事例 : 夕方の忙しい時に上司から仕事を頼まれた!

Aさんはある会社の営業マンです。夕方、客先から会社に戻ったAさんは、パソコンを立ち上げて仕事にとりかかりました。今日は客先でトラブルがあり、明日までに宿題を仕上げなくてはなりません。いつもより遅くなりそうだと覚悟したその時、上司のB課長がやってきてこう言います。「本部から頼まれたこの報告書、明日までに仕上げてくれないかな。」

Aggressiveタイプ1: 顧客からの苦情を思い出してイライラしていたAさんは、明らかに不機嫌そうな声で「明日までって言われても、こっちも仕事があるんです。いつもいつもこんな時間に仕事を持って来て、少しは考えて下さいよ!」と言ってしまいました。
B課長は困った顔をしながら立ち去ります。後になって、Aさんは上司に強く言いすぎたこと、上司の指示をはねつけたことが気になり、あまり仕事に集中できませんでした。翌日からもAさんとB課長の間は何となくよそよそしいままです。

Passiveタイプ2: Aさんは、今日はいつ帰れるだろうかという気持ちを押し殺し、上司の命令だからとあきらめて「はい、わかりました。」と言いました。B課長は「頼んだよ」と言い残して帰ってしまいます。その日、顧客と上司を恨みつつ、なおかつ自分のことを情けなく思いながら、Aさんは誰よりも遅くまで残業をすることになりました。

Assertiveタイプ3: Aさんは「実はお客様から宿題を頂きまして、明日までに仕上げなくてはならないんです。」と、ていねいに、しかし、はっきりと伝えました。するとB課長は「そうか、今日はそちらを優先してくれ。しかし他にこの仕事をまかせられる人はいないし、明後日の午前11時まででいいから、やってもらえないか。」と言います。Aさんはスケジュールを確認した後「わかりました。」と答えました。
その日、Aさんは客からの仕事に集中でき、いつもより30分遅くなっただけで帰ることができました。

さわやかな自己表現 “アサーション”

いかがでしたか。やや極端な例でしたが、3種類のやり方の特徴を理解していただけたと思います。

Aggressiveタイプ1は「攻撃的なやり方」です。自分の意見をはっきりと主張していますが、相手の言い分や気持ちを無視して自分の意見ばかりを押しつけています。「自分は決して悪くない」と思いこんでいるタイプの人によく見られます。このやり方はコミュニケーションをシャットアウトしてしまうので、周囲の人をどんどん遠ざけてしまいます。

Passiveタイプ2は「非主張的なやり方」です。相手の意見を尊重しているように見えますが、実は「上司の頼みを断ったりしたら、評価が下がるかも」と心配するあまり、自分の気持ちを押し殺しているのです。このやり方を続けていると、抑えていた怒りが突然爆発して人間関係がこじれたり、ストレスに押しつぶされて病気になったりすることがあります。

Assertiveタイプ3は「アサーティブなやり方」です。自分の意見も相手の意見も大切にしており、意見の食い違いがあっても歩み寄ろうとするやり方です。たとえ自分の意見が通らなくても、相手に自分の気持ちを率直に伝え、対等にコミュニケーションができたことで、お互いにさわやかな印象が残ります。

アサーティブなやり方で、お互いを大切にした気持ちのよいコミュニケーションを交わすことは、良好な人間関係を築く基礎になります。次回は「アサーティブになるために必要なこと」について説明します

 
参考文献:『アサーショントレーニング ~さわやかな「自己表現」のために~』
(平木 典子、日本・精神技術研究所)
『「NO」を上手に伝える技術』(森田汐生、あさ出版)

今すぐできる、ストレスが小さくなる5つの考え方(3)

ストレスが小さくなる考え方(3)

前回の記事で紹介したように、ストレスが多いと悩んでいる人は、知らず知らずのうちに「ストレスが多い考え方」をしています。そんなとき、ストレスが小さくなるような他の考え方を思いつくことができれば、ストレス対処にとても効果的です。

ストレスが小さくなる考え方をしてみよう

例えば、前回の「ストレスが多くなる5つの思考パターン」にはそれぞれ次のような対処法があります。

ストレスの小さくなる考え方

それでは実際に、Aさんのそれぞれの考えについて、ストレスが少なくなるような他の考え方を探してみましょう。

全か無か思考

全か無か思考を修正するには、足りないところだけではなく、できているところにも目を向け、0〜100点で考えるようにします。また、自分と相手の責任範囲はそれぞれ何パーセントなのかを考えます。

否定的な考え方

否定的な考え方に対処するには、その出来事から少し距離を置いて、全体を見るようにします。よく考えれば、失敗ばかりではなく、たまには上司に認められたこともあるでしょう。それはどんな時だったのか、具体的に考えてみます。

先読みの誤り

次から次へと悪い考えが浮かんできて止まらなくなったら、頭の中で軽くブレーキを踏んでみましょう。そして、何か備えておくことは無いのか具体的な行動を考えます。自分でコントロールできないことには「開き直る」ことも大切です。

他人の心の読み過ぎ

周囲の人は、Aさんのことを「ダメ社員だ。今すぐクビにするべきだ。なんて愚かなヤツだ。」と本当に思っているのでしょうか。「本人から聞いたわけでもないのに、証拠もなしに相手の気持ちを決めつけるのはやめよう」と考えましょう。

べき思考

「べき思考」に対しては、「べき」の部分を「だったらいいなあ」「けれど、時にはそうでないこともあるよなあ」と置き換えます。すると気持ちの余裕が生まれて、他のことや、今後の対策を考えられるようになります。

ストレスが小さくなる5つの考え方を、反復練習で身につけよう

ストレスを感じたときは「ストレスが多くなる考え方」をしていないかどうか、他に「ストレスが小さくなる考え方」があるかどうか、落ち着いて考えてみましょう。紙に書き出す方法が効果的です。最初は難しくても、反復練習を行ううちに、だんだんと合理的な考え方が身につき、以前ほど多くのストレスを感じなくなります。

参考資料として、Aさんが実際に記入した用紙を掲載します (クリックで拡大)。

ストレスが小さくなる考え方(実習)

参考記事
今すぐできる、ストレスの小さくなる考え方(1)
今すぐできる、ストレスの小さくなる考え方(2)
今すぐできる、ストレスの小さくなる考え方(3)
ストレスに負けない仕事術1 (ストレスコーピング基礎編)
ストレスに負けない仕事術2 (ストレスコーピング実践編)

この記事は、私が専属産業医をしている企業内で配信しているメールマガジンの内容を、ウェブ用に書き直したものです。

今すぐできる、ストレスが小さくなる5つの考え方(2)

Stress Management2

ストレスが多いことで悩んでいる会社員のAさんは、前回の記事で取り上げた「上司に怒鳴られた」という場面に遭遇したとき、次のようなことを考えていました。

Stress2-2

前回の記事で「悲観的な考え方や否定的な考え方は、マイナスの感情を引き起こし、ストレスの原因となる」と述べました。ストレスが多い人の考え方には次のようなパターンがあります。Aさんの考え方がどれにあてはまるのか、整理してみましょう。

ストレスの多い考え方(2)

ストレスの多い考え方(2)-3

「いつも」とか「まるっきり」という言葉は「否定的な考え方」や「全か無か思考」に特徴的です。また、恥ずかしいと感じる時には「他人の心の読み過ぎ」が関係しており、怒りを感じるときには「べき思考」が関係しています。このように、ストレスを感じたときの考え方は「5つの思考パターン」のいずれかに当てはまることが多いのです。

次回の記事では、この「ストレスの多い考え方」を「ストレスが小さくなるような考え方」に変えることができる、上手な対処法をご紹介します。

この記事は、私が専属産業医をしている企業内で配信しているメールマガジンの内容を、ウェブ用に書き直したものです。