東レ瀬田工場でメンタルヘルス講演

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先週、滋賀県にある東レの瀬田工場に招かれ、管理監督者向けのメンタルヘルス講演を行いました。80名ほどの社員のみなさんに、管理監督者としてのメンタルヘルス不調の基礎知識と、早期発見・早期対応のポイントについて、グループワークを交えて紹介してきました。

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さらに「メンタルヘルス不調を予防できる、健康な職場作り」をテーマに、「組織公平性」という考え方を軸にして、職場のストレス対策のポイントや、実際の改善事例の解説などを行いました。

組織公平性というのは、「うちの会社は公平な組織かどうか」という指標のことで、従業員のメンタルヘルスに大きな影響を与えます。結果の公平性よりもプロセスの公平性が重要視され、「意思決定の手続きが公平か」「意思決定者である上司の態度はどうか」という点に注目しています。

組織公平性の考え方は社員にとって理解しやすいため、職場のストレスについての理解を深めたり、職場環境改善を進めたりするいいツールになるのではないかと、今後の展開に期待しています。

ウチの会社は公平な組織か!?

前回の記事では社員のモチベーションに関係するさまざまな因子を紹介しました。その中で最も重要なモノは何か、大規模な調査が行われました。その結果、他の因子に強い影響を与え、最終的にモチベーションを高め、ストレス反応を低くしているのは「組織公平性」であることがわかりました。
 

不公平があっても、手続きが公平なら納得できる

組織公平性には次の4つの尺度があります。

  1. 分配の公平 
  2. 手続きの公平
  3. 情報的な公平
  4. 相互作用的な公平

この中で、最もわかりやすいのが「分配の公平」です。給与、役割、仕事の割り振りなどの分配が公平かどうかというものです。しかし、現実には、すべての従業員に公平に分配することは困難です。

モチベーションへの影響を考えると、実は「分配の公平」よりも「手続きの公平」のほうがずっと重要です。つまり、現実には分配の不公平が生じていても、それを決めるプロセスが公平であればよい、ということです。

しかも、組織公平性は主観的な尺度です。実際に公平であることはもちろん大切ですが、公平性を印象づけ、うまくアピールできれば、その効果はさらに高くなります。

情報的な公平とは、社内の情報が従業員に公平に与えられているかどうかという尺度です。相互作用的な公平とは、従業員同士が、職位や年齢、性別に関係なく、お互いの人格を尊重して接しているかという、対人関係の尺度です。

公平でないマネジャー改造計画

ある会社でマネジャーの多面評価が行われました。その結果、「公平でない」と悪い点数を付けられたAさんが、人事トレーナーのところに寄こされてきました。

Aさんは、あるプロジェクトのリーダーをしています。メンバーは新人のBくんと、ベテラン3人です。Bくんはいつも使い走りをしていて、仕事のミーティングはAさんとベテラン3人ですませることが多かったそうです。

4つの公平性の尺度のうち、最も簡単に改善できるのが「情報的な公平」です。人事トレーナーはAさんに次のようなことを提案しました。

「仕事のミーティングはこれまで通りです。ただし、新人のBくんが帰ってきた後で、同じ時間をかけて、同じ内容を、1対1で説明するようにしましょう。」

わざわざ同じ時間をかけて…と、気乗りしないAさんでしたが、実際にやってみると、新人のBくんが喜んだのはもちろんのこと、意外な効果が表れました。

ベテラン社員の3人も「マネジメントは全然ダメな上司だと思っていたが、どうやらBくんの面倒をちゃんと見ているようだ」と、Aさんを見る目が変わってきたのです。公平な上司を印象づける作戦が見事に成功した事例です。

「三つ子の魂百まで」の新人教育

「三つ子の魂百まで」ではありませんが、新人のうちに抱いた会社のイメージは、その後もずっと維持されることがわかっています。

例えば、入社式での説明などに「公平」というキーワードを散りばめておくと、「この会社は公平だ」(公平にとても気を使っている)というイメージを抱き、その後もずっと「うちの会社は公平だ」と感じてくれるというわけです。

また、新人のうちの経験は、その後のメンタルヘルスや離職率など、社員のモチベーションに大きな影響を与えることも知られています。

新入社員研修や、その後のOJT、メンタリングなどは「組織公平性」を意識して行うと効果的です。上司やメンターが、公平性について理解しており、手続きのや情報の公平性を態度で示すことが大切です。

ウチの会社は公平な組織か

当社の社員は「組織公平性」をどのように感じているのでしょうか。昨年度の社内調査のレビューを見てみましょう。


この部分は割愛。写真をお楽しみください。

マネジャーの行動を評価する上で、組織公平性は最も重要な軸のひとつです。多面評価などを行っている場合は、組織公平性を意識しながら結果を読んでみると、新たな発見があるかも知れません。

参考

ELECTRIC DOC. – 給与で社員のモチベーションは上がらない!?

この記事は、私が専属産業医をしている企業内で配信しているメールマガジンの内容を、ウェブ用に書き直したものです。

給与で社員のモチベーションは上がらない!?

今回と次回は「組織心理学」をテーマにお送りします。なぜ企業の健康管理部門が組織心理学を取り上げるのだろうかと、疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。実は、メンタルヘルスの問題と組織心理学とは深い関わりがあるのです。
 

なぜ健康管理と組織心理学が関係するのか

企業の健康管理活動は、「病気でなければよい」という従来の早期発見・早期治療の考え方から、「もっと元気に」という予防や健康増進の考え方へシフトしています。

一方、企業にとって、生産性を高めることは常に重要な課題でした。時代背景に応じて、年功制や職能制度、最近の成果主義など、さまざまな施策が導入されてきました。

突きつめると、メンタルヘルスと生産性は表裏一体の関係にあります。それを説明してくれるのが、組織心理学における「ワーク・モチベーション」(働く動機付け)という分野です。

つまり幸運にも、社員の健康を考える健康管理部門の関心と、生産性を高めたいと考える企業の関心とが、ここにきて一致したというわけです。

社員のモチベーションを高めるものは何か

組織心理学の最大の関心は、何が社員のやる気や生産性を上げるのか明らかにすることです。そのため、モチベーションに関するさまざまな理論が検証され、発展してきました。

例えば、給与や賃金などは上がった時よりも下がった時のインパクトがずっと強いことが知られています(動機付け・衛生要因理論)。経済的な報酬でモチベーションを高めるという制度はそれほど効果的な施策ではないのです。人件費に限りがあることを考えれば、実は極めて危険であるとも言えるでしょう。

部下のモチベーションを高めるマネジメント

社員のモチベーションを高めるのは、金銭的な報酬よりも、評価や承認などの「心理的報酬」です。おおざっぱではありますが、モチベーション理論のいくつかをマネジメント手法にあてはめると、次のようなヒントが得られます。

  • 「部下の目標をよく聞き出した上で仕事を割り振る」(期待理論)
  • 「自分と比較する相手をうまく選ばせる」(公正理論)
  • 「ポリシーは上から、アイディアは下から」(Control-Demandモデル)
  • 「2~3回に1回ほめる」(公正理論、努力報酬不均衡モデル)

いずれも上司と部下のコミュニケーションが基盤となっています。傾聴法やコーチングの重要性が再確認できます。

モチベーションに最も影響を与える「組織公平性」

モチベーションに影響を与える因子はいくつもあり、複雑に絡み合っています。その中で何が最も重要なのか、日米の多数の企業を対象に研究が行われました。

その結果、「組織公平性」という尺度が、あらゆる要素に強い影響を及ぼし、従業員のメンタルヘルスと生産性を高めていることが明らかになったのです。

次回は、昨年度の社内調査の結果をレビューしながら、組織公平性について説明を加え、組織公平性を高めるマネジメントの工夫などを紹介したいと思います。

参考

ELECTRIC DOC. – ウチの会社は公平な組織か!?

この記事は、私が専属産業医をしている企業内で配信しているメールマガジンの内容を、ウェブ用に書き直したものです。