生活習慣病と健診データを理解するための「公式」

「○○の数値が高いが、どうしたらいいだろうか。」 健康診断の後に面談をしていると、必ず出てくる質問です。しかし、せっかく相談したのに「お酒を減らしなさい」、「禁煙しなさい」、「ダイエットしなさい」という決まり文句のお説教をされただけで、あまり参考にならなかったと言う人もいます。
 
逆に、医師の立場からすると、すぐにでも内服治療を開始したいほどひどいデータなのに、「忙しくて最近は運動をしていないので、もっと運動します」 「お酒をなるべく減らして様子をみます」 「体重を減らして頑張ります」という、あてにならない決意表明を聞かされるばかりで、イライラする場面も少なくありません。

どうやら健診結果や生活習慣病について、双方の理解に食い違いがあるようです。検査値の異常がなぜ出るのか、このブログでも何度か説明してきました。もう一度、次の簡単な公式を使って整理してみましょう。

【 生活習慣病の定理1 】
(1) 検査の数値 = 生まれつきの体質 + 生活習慣 + 年齢 - 薬
(2) 生活習慣 = 食事 + お酒 - 運動
(3) 生活習慣 ≒ カロリーの収支 ≒ 体重

健診のデータが異常値を示す原因には、生まれつきの体質による先天的な要因と、生活習慣や服薬治療などの後天的な要因があります。生活習慣とは、食事や飲酒、運動の習慣のことです。つまり体重管理とも言い換えられます。

「なぜ自分はこの数値が高いのか」 「どうすれば下がるのか」、上の公式を使って考えると整理しやすくなります。

例えば、肥満ではないのに数値が高いとか、家族にも同じ病気の人がいるという場合には、先天的な要因の影響が強いと考えられます。生まれつきの体質や加齢による変化は、本人の意思ではどうすることもできませんが、体重の管理や服薬の開始などを行えば、数値を下げることができます。

【 生活習慣病の定理2 】
(4) 重大な病気の発生 = Σ(高血圧) × Σ(高脂血症) × Σ(高血糖)
                 × Σ(高尿酸血症)
※ Σ: それぞれの悪影響を年数で累積したもの。

「体質が原因だから、薬を飲まなくていいですよね。」 「薬を一生飲み続けるのはイヤなので治療しません。」と、生活習慣病の治療について誤解している人も多いようです。

自覚症状が無いのに、どうして生活習慣病を治療するのでしょうか。それは、脳梗塞や心筋梗塞などの重大な病気の発生を予防するためです。

生まれつきの体質の影響であれ、生活習慣の影響であれ、データ異常が長く続くと動脈硬化が進行します。その結果、大事な臓器の血管が詰まって、死亡したり、寝たきりになったりするのです。データの異常が軽度でも、複数の要因が重なれば、動脈硬化の進行や病気の発生のリスクは何倍にも高くなります。

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この記事は、私が専属産業医をしている企業内で配信しているメールマガジンの内容を、ウェブ用に書き直したものです。

トヨタ式 「健康カイゼン術」

「カンバン」、「カイゼン」に代表される生産方式や、「なぜ?」を5回繰り返す思考法など、「トヨタ式」と呼ばれる企業経営術に注目が集まっています。先日、海外勤務をしている日本人の医療支援に関する勉強会で、トヨタの産業医の先生からとても興味深い話をうかがいました。
 
どの会社にも海外赴任前に健康診断を行い、健康状態をチェックする仕組みがあります。最近は海外での仕事も増え、健診結果に異常がある人や持病のある人も海外に出るようになりました。中には、健康状態に問題があり、海外勤務にストップをかけざるを得ないケースもあります。

そんなときトヨタの社員は、自主的に「健康カイゼンシート」を作り、1~2ヶ月間の取り組みの後、きちんと結果を出してくるというのです。実際に社員が作ったカイゼンシートを見せていただきました。いろんな書式のものがあり、やや我流なところもありますが、生活習慣の改善に用いられる「セルフモニタリング」の考え方にかなった、とても合理的なものでした。

医師など専門家の助けを借りなくても、自分たちで考えてここまで実践できるというのは、「カイゼン」の意識がひとりひとりに根付いた「トヨタの文化」だろうと、その先生はおっしゃっていました。海外勤務ができなくなるという業務に関わる問題なだけに、本人と上司が一緒になって取り組んだ例もあるそうです。

ところで、以前もお伝えしましたが、1日2回体重を測るというのは、とても簡単で確実な体重管理の方法です。体重管理はあらゆる生活習慣病の改善や予防に効果があります(参照:生活習慣病Q&A / マンガでわかる生活習慣病)。本サイトの「今度こそやせる! ホンキでホントのダイエット」などを参考にして、ぜひトライしてみて下さい。

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30日間マクドナルド生活

30日間マクドナルドばかり食べ続けると人間の体はどうなるの? 缶コーヒーを毎日1本飲み続けると3ヶ月で体重は何kg増えるの? カロリー摂取は簡単でも、消費するのはとっても難しいのだ。
 

運動でカロリーを消費することの大変さ

みなさんは生まれて初めてお給料をもらった時のことを覚えていますか。労働の対価にお金を得ることの大変さや尊さを、きっと実感したことでしょう。僕も先日からスポーツクラブで汗を流すようになり、カロリーを消費することの大変さを身にしみて感じているところです。

例えばエアロバイクを30分こいでも、消費カロリーはたったの約150kcal。これは人気のコーヒーショップ、スターバックスのカフェラテ(トールサイズ, 約200kcal)にも及びません。運動後の水分補給にポカリスエット(500ml, 135kcal)を飲んでしまうと、それだけで30分の運動のほとんどが無駄になってしまいます。

先日「スーパーサイズ・ミー」という映画をレンタルしました。マクドナルドのメニューだけを30日間食べ続けるという、非常にバカらしくて、なおかつ危険な実験を行ったドキュメンタリー映画です。食事と健康、自己責任と企業責任、外食産業と政治など、肥満大国アメリカの「食」の問題を浮き彫りにした話題作です。

監督自ら取り組んだ1ヶ月間の実験結果は、医学的に見ても非常に興味深いものでした。映画の中で「1週間にこれだけ余分なカロリーを摂取している」と、テーブルに山盛りの砂糖が映るシーンがあります。その異常な量に思わず背筋がゾッとしました。

ふだん私たちは摂取カロリーや消費カロリーのことをあまり気にせずに生活しています。しかし、例えば缶コーヒーを毎日1本ずつ、1ヶ月に20本飲むとしたら、一体どのくらいのカロリーになるのでしょうか。砂糖に換算すると何グラムになるのか、1年間で体脂肪は何キロ増えるのか、試しにそんな計算をしてみました。


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あぁぁ!! なんと恐ろしいっ!! 缶コーヒー飲料、清涼飲料水、スポーツドリンク、それにカフェラテの破壊力!! ちなみに、体脂肪1kgは体積にして約1087立方センチ。直径12.8cmのボールや、1辺10.3cmの立方体、500mlのペットボトル約2本分ほどの大きさになります。

まあ、これらは計算上の値にすぎませんが、みなさんもカロリーの収支バランスには気をつけてくださいね。電子式の体重計に乗って、毎日100g単位で体重を測ってみるのが、一番わかりやすくて簡単な方法です。

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生活習慣病Q&A / マンガでわかる生活習慣病

僕が勤めている企業では、産業医と保健師が手分けをして、年に1度、全社員とひとりひとりお話しをするという「全社員面談」を行っています。その目的は、社員の皆さんが「自分の健康を自分で守る」お手伝いをすることです。今回は、面談のときに話題となることが多い、「生活習慣病」についての疑問にお答えします。
 
  Q1: 生活習慣病を治療するのはなぜ?
  Q2: 薬を飲み続けるのはなぜ?
  Q3: 特に自覚症状が無いのに治療するのはなぜ?
  Q4: 体重を減らせといわれるのはなぜ?
  Q5: 基準値がだんだん厳しくなるのはなぜ?
  Q6: 体質遺伝が原因だと思うけれど治療は必要なの?

Q1: 生活習慣病を治療するのはなぜ?
A1: 動脈硬化を招き、心臓発作や脳卒中を起こすからです

日本人の三大死因はガン(31%)、心疾患(15%)、脳血管疾患(13%)です。このうち心疾患と脳血管疾患をあわせると、ガンに匹敵する数字になります。心臓発作や脳卒中は高齢者の病気だと考えられてきましたが、現在では40代~50代で発症する人も増えています。命をとりとめても、重い後遺症が出て寝たきりになるなど、以後の生活が著しく不自由になる場合もあります。

心臓発作や脳卒中の原因は「動脈硬化」です。動脈硬化を起こした血管は、血管の壁が厚くもろくなって、血栓ができやすくなり、破れやすくなります。動脈硬化は老化現象のひとつですが、高血圧、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症、肥満、喫煙などの要因があると、その進行は加速します。

生活習慣病の治療は、動脈硬化の進行を抑え、心臓発作や脳卒中による死亡や後遺症を防ぐために行います。

Q2: 薬を飲み続けるのはなぜ?
Q3: 自覚症状が無いのに治療するのはなぜ?
A2, A3: 動脈硬化の進行を予防するためです

自覚症状が無いことは、生活習慣病の特徴のひとつです。しかし、血圧が高い状態や血中脂質が多い状態のまま放っておくと、動脈硬化はどんどん進行していきます。そして突然、心臓発作や脳卒中のような重大な病気が起こることになります。動脈硬化の進行を抑えるためには、自覚症状が無くても治療を続け、血圧などを正常範囲に維持することが大切です。

Q4: 体重を減らせといわれるのはなぜ?
A4: 体重は生活習慣の目安であり、
    また、体脂肪それ自身が生活習慣病の原因となるからです

生活習慣病にはカロリー過剰、運動不足、ストレスなど、さまざまな生活習慣が関係しています。体重を測ることは、生活習慣を考える上でよい目安になります。また最近では、脂肪細胞から分泌される物質が、生活習慣病や動脈硬化に直接影響を与えることもわかりました。体重を減らすことは生活習慣病の改善につながるのです。

Q5: 基準値がだんだん厳しくなるのはなぜ?
A5: 軽度の異常でも、危険因子が重複すると
    心臓発作や脳卒中のリスクが高まることがわかったからです

「肥満ぎみ」「軽い高血圧」「軽い高脂血症」「軽い糖尿病」など、たとえ軽度であっても動脈硬化の危険因子を重複して持っていると、心臓発作や脳卒中を起こしやすいことがわかってきました。このような状態を「メタボリック・シンドローム」といいます。

日本の企業労働者12万人を対象とした調査では、これらの危険因子を1つ持つ人は、全く持たない人に比べて心臓病の発症リスクが5倍に、2つ持つ人では10倍に、3~4つ持つ人では何と31倍になるという結果が出ています。

Q6: 体質遺伝が原因だと思うけれど治療は必要なの?
A6: 動脈硬化を予防するためには治療が必要です

どんな病気にも先天的要因(遺伝)と後天的要因(生活習慣や生活環境など)の両方が関係しています。生活習慣病でも、家族にも同じ病気がある場合や、年齢や体重と比べて著しく数値が悪い時には、遺伝的な要素が強いと考えられます。その場合、生活習慣を改善するだけでは十分な治療効果が得られないことが多く、動脈硬化を予防するために早くから薬を飲み始めることもあります。

■ マンガでわかる「生活習慣病」

武田薬品工業株式会社のウェブサイトには「マンガでわかる生活習慣病」というコーナーがあります。あるサラリーマンを主役にしたストーリーは、マンガとしてもなかなか楽しめます。現在「生活習慣病」「高脂血症」「糖尿病」「心筋梗塞」の4つの作品が掲載されています。

生活習慣病を指摘されたフランス料理店のオーナーシェフや、再起をかける往年のアイドルが登場するなど、何となく『美味しんぼ』のような雰囲気でもあります(笑)。

◆「生活習慣病情報」(武田薬品工業)
  http://www.takeda.co.jp/pharm/jap/seikatu/index.html
◆「マンガでわかる生活習慣病」(武田薬品工業)
  http://www.takeda.co.jp/pharm/jap/seikatu/1/index.html

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