職場のメンタルヘルスのシンポジウムで発表しました

第17回 日本産業衛生学会 産業医・産業看護全国協議会のシンポジウムで、「職場のメンタルヘルス不調の早期発見・早期対応」をテーマに発表をしてきました。

メンタルヘルス不調者の早期発見を行うポイントは、次の4つです。

(1) 管理監督者へのラインケア教育
(2) 一般社員へのセルフケア教育
(3) 相談窓口の整備と周知
(4) 早期発見のための情報収集

中でも「職場の上司に早く見つけてもらって」「相談窓口に早くつないでもらう」ことが効果的です。そのためには、(1)管理監督者の教育、(3)相談窓口の整備をしっかり行うことが大切です。

また、現場の情報収集や信頼関係の構築など、予防活動の基盤を作るには、産業保健スタッフと社員が日ごろからフェイス・トゥ・フェイスの関わりを持つことが有効であると強調してきました。

著名な先生方に囲まれての発表はとても緊張しましたが、とりあえず「わかりやすい説明をする」「かっこいいスライドを披露する」という目標は達成できたかなと思います。

産業保健の世界に入って4年。まだまだ勉強中の身でありながら、このような発表の機会を与えられることはとても光栄なことです。座長の先生方、事務局の皆さん、シンポジストの先生方、発表を聞いてくださった方々に感謝したいと思います。

学会で発表したポスター (VDT作業の労働衛生管理)

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2007年4月25〜27日、大阪国際会議場で第80回日本産業衛生学会が開かれました。今回は「全社員を対象にイントラネットを用いて行った、VDT作業に関する労働衛生管理 (1)〜(3)」と題して、ポスターを3枚ならべて発表してきました (クリックで画像拡大)。

 
それぞれのポスターはA0版、広げた新聞紙2枚分の大きさです。1〜2メートル離れても読みやすいよう、48ポイント(約1.7cm)という大きな文字を使っています。ポスターの原稿は、MacのPagesというワープロソフトで作成しました。

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ポスター会場の模様

VDT作業とはいわゆるPC作業のことです。VDT作業を長時間続けて行うと、目の疲れ、肩こりなどの症状が起きます。これを予防するためには、作業環境や作業姿勢を整えるとともに、作業時間を管理することが大切です。

今後は、VDT作業の時間管理を手助けするソフト「VDTタイマー」を使い、自覚症状の軽減や生産性改善の効果があるかどうか、検討していきたいと考えています。

学会でカメラ係をしてきたよ。

9月16日に日本産業衛生学会の関東地方会が行われ、「職場のメンタルヘルス」をテーマに4人の先生の講演がありました。今回は会場のカメラ係として参加してきました。
 
「職場のメンタルヘルス」をテーマに4人の先生の講演がありました。今回も色々な話があったのですが、特に印象に残ったのは次の4つのポイントです。

  • うつ病を早期に発見して対応するためには家族によるケアも重要。家族が相談できる窓口を明確にしておくこと。
  • 業務に関係ないことが原因のうつ病でも、治療を受けさせなかったり、仕事を続けさせたりして病気が悪くなったとき、会社は責任を問われる。
  • 3月に発表された「労働者の心の健康の保持増進のための指針」は、事業者責任の根拠になるので、メンタルヘルス対策の必要性を説明するときに役立つ。しっかり読んでおくこと。
  • 何か活動するときは「なぜその活動を選んだのか」説明できるようにする。その時に手に入る、もっとも信頼できるデータ(根拠)に基づいた活動をする。

また今回は、学会の運営に協力するボランティア・スタッフとして参加しました。会場内の写真係を頼まれたので、発表者の先生がたや、会場内の風景を (じゃまにならないよう気をつかいながら) 撮影しました。

発表者の写真って、なかなか難しいですね。目をつぶっていたり、そっぽを向いていたり、タコみたいな口になっていたりで、顔じゃなくて手に持っているマイクのほうにピントが合っていたりとかで、「男性はカッコよく」「女性は美しく」撮れるまで、何度も撮り直しました。

いやぁ、何事も経験ですね。楽しかったです。

第78回日本産業衛生学会のまとめ

 

4月20日~24日に東京で行われた第78回日本産業衛生学会に行ってきました。職場の安全や、はたらく人の健康に関するいろんな発表がありました。その中で気になったいくつかの話題をピックアップしてみます(昨年の学会の感想)。
 

■ダイエット食品を用いた減量指導

テレビや電車広告で有名なダイエット食品「マイクロダイエット」を用いた減量指導の報告がありました。特定の商品や健康法を扱った発表は、発表と言うより宣伝だったりすることもあるので、学会でこのような発表が行われることはとても意外でした。まゆにしっかりとつばをつけて、発表を見てきました。

実際に33名の社員を対象に実施した研究では、2ヶ月間で約4kgの減量効果があったそうです。ダイエット食品を取り入れた方法と他の方法を比べてみると、摂取カロリーを制限するという点では違いはありませんが、カロリー計算の面倒が無く、早期に結果を体感できるという点では優れていると思います。しかし、ダイエット食品は「やせ薬」ではありません。何よりも生活スタイルの継続的な改善が必要なことには変わりありません。

■ITで健康を支援する学習システム

何でもかんでも「IT」と騒いでいた時代は終わりましたが、禁煙や減量、メンタルヘルス教育などをPCを通じて行おうという取り組みは盛んに行われています。「e-ラーニング」などと呼ばれるこの方法には、個人的には大きな魅力と可能性を感じています。

しかしながら、発表や展示を見てみると、ソフトが使いにくそうだったり、文章が読みづらかったり、画面レイアウトが稚拙だったり「これなら冊子でいいか」と思うようなものが多く、なんだか残念でした。

情報を紙芝居的に表示したり、挿し絵をパタパタアニメで動かしたりすることが「IT技術の活用」ではありません。「e-ラーニング = 電子紙芝居」という固定概念から早く脱却すべきでしょう。e-ラーニングならではの高い教育効果を追求するためのヒントは、企業の製品紹介サイトにあるさまざまなコンテンツに隠されているのだと思います。

■長時間残業への対策

以前の記事でも少し取り上げましたが、残業問題は本当に頭の痛い問題です。「長時間残業者への面談」をいくら行っても残業が減るわけではなく、社員からも上司からも「またか」とイヤな顔をされ、しまいには残業という言葉を口にすることすら面倒になってしまいます。

今回の学会でも、残業対策にまつわる多くの発表がありました。今さら繰り返すまでもなく、残業によって健康を害することは明らかです。その中で、われわれ産業保健スタッフのできることは、

・残業の心身への影響について教育して自衛を呼びかけること
・体を壊しそうな社員を早く見つけて適切な処置を手配すること
・残業の実態と健康リスクについて上司や経営者に情報を提供すること

の3つしかありません。残業そのものを減らす努力は、社員や上司、労働組合や経営者、国の施策にまかせるしかないのです。

実際に取り組んでいる企業の担当者と話をしていく中で、何を目的として、どのように活動すべきか、自分の考えを整理することができました。

■仕事のストレスに関する研究

従業員のメンタルヘルスについて、仕事とストレスの関係を調べる研究が盛んに行われています。その研究発表を聞いていつも思うことは、「じゃあ、どうすればいいの? 具体的な対応策は?」ということです。

例えば「残業時間が長いほどストレス反応が高いことがわかった」という発表があったとします。もちろん研究の方法やデータのまとめ方にも興味はありますが、一番知りたいのは「では、どうしたら残業時間が減るの?」、「どうすればストレス反応が減るの?」ということなのです。

しかし、多くの研究はそのような疑問に対する答えが用意できていません。そのことに対して不満を感じていた時期もありましたが、最近では、研究結果を実務の場で活かす方法を考え、実践し、フィードバックを返すことは、実はわれわれ現場の実務担当者の役割ではないだろうかと思うようになりました。

■行動変容、アサーション

1年前に産業医になって、最初に遭遇した問題は「効果的な健康指導を行うにはどうしたらよいのか」ということでした。ただ「体重を減らしましょう」とか「お酒をやめないと死にますよ」などと言うだけでは、効果が期待できるはずもなく、何のために健康指導をしているのかわかりません。

この疑問に答えてくれたのは、昨年の学会のときに一緒に飲みに行った、ある研究者の言葉でした。「それは『行動変容』というんですよ。心理学の分野のひとつです。」 彼にすすめられた本を買って勉強することでずいぶんと理解が深まり、実務にも役立っています。

今年は「アサーション」という言葉を覚えて帰ってきました。アサーションとは「言いたいことを言えずに落ち込んだり、逆に強く言いすぎたと後で悩んだりしないように、さわやかに自己表現する」ということです。教えてもらった参考文献をさっそく手に入れて勉強していますが、非常に明快でタメになることが書かれています。アサーションについては、いずれこのサイトでも触れてみたいと思います。

参考文献:
「アサーショントレーニング -さわやかな自己表現のために-」 (平木典子)
「自己カウンセリングとアサーションのすすめ」 (平木典子)

■まだ勉強不足の分野

産業保健と言えば、工場の生産ラインのように工作機械や化学物質を扱う作業現場の安全を忘れることはできません。今回の学会でも多くの発表がありましたが、僕の担当している地区にはこのような現場が無いため、関心はそれほど高くありません。まだまだ勉強不足を実感します。

■このサイトを見られている!!

一番驚いたのは「サイト、見てますよ!」と何人かに声をかけて頂いたことです。いやあ、本当にびっくりしました。これからもホント、よろしくお願いします。日本の産業のために、はたらく人たちの健康のために、力を合わせてがんばっていきましょう!!

第77回日本産業衛生学会総会 (名古屋) に参加して

4月14~16日に名古屋国際会議場で行われた日本産業衛生学会に参加してきました。産業保健の分野では最も規模が大きいもので、産業医1年生の僕にとっては最高の勉強の機会でした。
 
朝6時の新幹線に乗るために、目覚まし時計を午前4時30分にセットしておいたのですが、午前2時、午前3時、午前4時……と目が覚めてしまい、まるで遠足の前の小学生のように楽しみにしていました。

今回の学会では、主にメンタルヘルスや健康管理、また職場で見られる病気についての発表を聞いてきました。3日間の発表はどれも面白く、書きとめたノートは実に30ページ以上になりました。産業保健における現状の課題、そして他社での取り組みなど、これから産業医として活動していく上でとても役立つ内容でした。

第一線で活躍されている産業保健スタッフの方ともお話をする機会があり、先達の貴重な助言をいただくこともできました。心理学の専門家も参加しされており、減量、禁煙、禁酒など生活習慣の改善に重要な「行動変容」についても教えていただきました。ここで出会った人たちは、これから仕事をしていく上での重要人物ばかりで、なるほどこれが「人脈づくり」なのかと、もっと名刺を持ってくればよかったと後悔することしきりでした。

「職場の人間」を対称とした調査研究は、実験室の中で行う研究とは異なり、景気の変化、季節による業務内容の変化、業種の違いなどによってデータが大きく左右されます。「きちんとした研究」を行うためには、データの正しい取り扱いに気をつけなくてはいけません。そこを理解していないと、夏の東京の気温と冬の北海道の気温を単純に比較して「北海道は東京より寒冷な気候である」と結論づけるようなことになります。

今回の学会では、データの測定や比較の方法に問題がある発表が多かったような気がします。また、「各地の気候に応じた対策が必要だ」などという具体性のない提言もよく耳にしました。しかし、発表された調査データそのものはとても興味深く、また、それぞれの職場改善のための取り組みも評価に値すべきもので、参考になりました。

現在、産業保健に対するニーズはさまざまに多様化しています。しかし、以前のように、有毒ガスの対策をしろとか、じん肺の検診をしろとか、法律に従って一方的に指示を出していればよかった時代とは違って、生活習慣病やメンタルヘルスなど最近の課題の多くは、現場の従業員の協力なしに解決することができません。

つまり、円滑に産業保健活動を進めていくためには、今までのように専門職として独自に活動するだけではなく、同じ目的を持つする会社の一員として、周囲の社員たちと協調する姿勢が必要になります。それにはまず、自らすすんで現場に飛び込み、「僕は君たちの仲間なんだよ」、「こんなふうに役に立つんだよ」ということを認めてもらわなければなりません。

従業員ひとりひとりと気軽に話ができ、管理職ともまともに話ができ、経営者とだって対等に話ができる産業医に、従業員ひとりひとりの健康を気づかいながら会社全体の生産性に貢献できる産業医に、医療の専門家でありながら国際ビジネス感覚をも備えた、そんな夢のような産業医になりたいと、心から思った3日間でありました。