看護学生のための産業保健講座「組織の健康管理」

先日、看護学校の学生さんが職場見学に来ました。「壮年期の健康管理」という分野の実習だそうです。産業保健のことを全く知らない学生さんに、そのポイントをたった45分で説明しなければいけません。今回は「病院と産業保健の違い」「組織の健康管理」についてお話をしました。

■病院と産業保健の違い

以前の記事でも少し説明したように、病院での医療行為と産業保健活動には上図のような違いがあります。

産業保健活動の目的は、事業主の安全配慮義務と労働者の自己保健義務のお手伝いをすることです。就業可能レベルの健康度を目指した予防活動や、安全で健康に仕事ができる職場環境作りの活動を行っています。

企業によって経営方針や業務形態が異なるため、社内の健康管理の仕組みやスタッフの配置はそれぞれ異なります。変化するさまざまなニーズにこたえるために、効率的にリソースを配分して計画的に活動することが求められます。

■個人の健康と組織の健康

病院では主に「個人の健康管理」を行い、地域保健や学校保健では「集団の健康管理」という活動が加わります。産業保健ではさらに「組織の健康管理」という視点が求められます。

ところで「健康」とは、どんな状態なのでしょうか。産業保健分野では「働く」ということを中心に、次のように「健康」を考えます。

(1) 病気やケガをしない
(2) しっかり仕事ができる
(3) 仕事はもちろん、家庭や地域社会などでも活躍できる

同じことが、組織の健康にも当てはまります。

(1) 社員が病気やケガをせず、安全に快適に働ける
(2) 社員がしっかり働き、組織として機能する
(3) 社員の家庭や地域社会にも貢献できる

「健康な組織」とは「社員の健康作りを応援できる組織」と言い換えてもよいでしょう。

■組織の健康管理 = 個人の健康管理 × たくさん

産業保健スタッフは、個人の健康管理と組織の健康管理の両方を支援します。組織の健康管理を行う方法には「なるべく多くの個人や職場と関わり、個人の健康管理を通じて、組織の健康を見る」というアプローチがあります。

このアプローチを成功させるためには、個人の健康管理を行うすべての場面において、組織の健康について問題意識を持つことが必要です。高残業や過重労働、メンタルヘルスの問題、職場環境、事故やケガの背後には、組織の問題が潜んでいることがあります。複数の人から同じような話を聞いたときにも要注意です。

組織の問題を見つけたら、健康管理や安全管理の視点、あるいは法的な視点から、上司、人事、経営者などに情報をフィードバックし、問題点やリスクを指摘します。

■と、偉そうな事を言いましたが……(笑)

と、何も知らない看護学生さんの前で、いろいろ偉そうなことをしゃべったわけです。ただ、自分自身をかえりみると、こうした活動がうまくできているかどうか、あまり自信はありません。とにかく自分の仕事について、じっくりと見つめ直すよい機会になりました。少しでも産業保健活動のポイントや面白さが伝わればいいなと思います。

集中力を高め、仕事に余裕を生む「70%予定管理法」

P5141133

「産業保健マーケティング」という本に「70%予定管理法」という時間管理法が紹介されています。気がつくと予定表がギュウギュウになっている人、常に仕事に追われていて余裕が無いと感じている人に大変おすすめの方法です。

70%予定管理法の2つのポイントとやりかた

70%予定管理法のポイントは「作業時間の集中力を高めるため、仕事の整理や準備、小休止を行う合間時間を設けること」「今はまだ見えていない仕事のために、時間を確保しておくこと」の2つです。

(1) 作業時間(70%)と合間時間(30%)を必ず組み合わせる

1時間の会議であれば、その後に25分の合間時間を組み合わせて予定を組みます。2時間の仕事は、1時間24分の作業時間と36分の合間時間と考えます。合間時間には仕事の片付けや整理、小休止とクールダウン、次の仕事の準備などを行います。

  70%予定管理法

(2) 来月の予定を立てるとき、30%の空き時間を確保する

来月の予定を立てるとき、今はまだ見えていなくても、そのうち出てくるいろいろな仕事のために、稼働時間の30%にあたる時間を空白のまま残しておきます。
  70Yotei2

(3) 今月~来週の予定を立てるとき、9%の空き時間を死守する

当月や前の週になると、30%の空き時間にも追加の予定が入ってきます。残り時間が20%を切った時点で、予定の見直しを行い、残り9%の時間を当日までなるべく死守します。
  70Yotei3

(4) 残りの9%は今週や当日の突発的な出来事のために使う

9%の空き時間があれば、突発的な出来事にも余裕をもって対応できます。

「そんなの理想に過ぎないでしょ」と言う前に

70%予定管理法を紹介すると、たいてい「実行できれば理想的だけど、そんな職種は限られてるでしょ」という反応が返ってきます。そういう感想を抱く気持ちはよくわかります。しかし、もう少しこの方法を理解すれば、自分の仕事に応用できそうだと思えるかもしれません。

オフィスワークの前後には、書類や資料を準備する時間、書類や資料を片付ける時間、トイレに行ったりコーヒーを入れたりする時間、ぼんやりしている時間などが存在しています。つまり、私たちが見かけ上「1時間の仕事」だと思っていた時間は、「45分の作業時間と15分の合間時間」に区別できるのです。時間の区切り方は「集中力を高める 48分:12分 時間活用法」のように、80%と20%、あるいは75%と25%でもいいと思います。

また、予定表の30%、9%の空き時間を確保することに対して「仕事が進まないのではないか」「予定表が埋まっていないと不安だ」と思う人もいるでしょう。しかし、予定がぎゅうぎゅうに詰まっているときこそ、今の仕事の進め方が本当に効率的なのか、質の高いサービス(成果)を安定して提供できているか、今後を見据えた戦略的な仕事や能力開発ができているか、見直す必要があるようにも感じます。

「70%予定管理法」を実践してみて

最初は、合間時間を取ることで「見かけ上の仕事時間」が少なくなり、仕事のペースが落ちるのでは心配していました。実際にはそんなこともなく、思った以上に仕事がはかどりました。合間時間にしっかりクールダウンすると疲れが残らず、集中力を保つことができます。また、前日や当日に急な相談が入ることも結構あるので、そんな時は残り9%の空き時間が実に役立ちました。

ただ、最近は担当する仕事量が増えてきており、来月の予定を立てた時点で、すでに空き時間が15%を切っているのが悩みです。とりあえず稼働時間を増やすことで対応していますが、仕事のまとめ方、周囲との分担のやり方など調整が必要なようです。時間管理を行うためには、1日の作業時間を細かく記録しておくと参考になります。次回は、私が行っている作業時間のお手軽な記録法をご紹介しようと思います。

チームを運営できる産業医に、なりたいなぁ~

最近ずっと、社内の産業保健プロジェクトの企画書を書いていました。

プロジェクトといっても大した内容ではありません。「禁煙に関するポスターを作成して、毎月社内に掲示しよう」というだけのことです。やろうと思えば、明日からでも、僕ひとりだけで始められます。しかし、それでは「単なる思いつきの行動」と何ら変わりませんし、チームとしての活動にも発展しません。
 
「企画、提案、プレゼン、会議の運営、チームの立ち上げ、プロジェクトの運営」……。ふつうの会社員は当たり前に行っていることですが、以前の記事に書いたように、僕にとってはどれも初めて。本を買ったり、上司や同僚に相談したり、友人にアドバイスをもらったり、苦労の連続です。

産業保健活動の「効果」は10年後?

例えば、販売促進の企画であれば、その最終的な目標は、見込み客の増加、新規顧客の獲得、優良顧客へのサービスなどを通じて「会社の利益を増やすこと」です。

産業保健企画の最終ゴールは「社員の健康という企業の根幹資源の管理に貢献すること」です。社員の健康度アップ、と言えば少しわかりやすくなります。しかし、売上げアップやコストダウンなどと比べると、成果を数字で示すのが難しく、効果が出るまで時間もかかります。

「禁煙のポスターを掲示する」という今回の活動の最終目標は「肺ガンの減少」ですが、その結果が出るまでは10年以上かかるでしょう。そもそも、ポスターの掲示だけでは「禁煙する」という行動には直接つながりません。せいぜい「禁煙への関心度アップ」が妥当です。これを数字で示すには、前後でアンケート調査などを行う必要があります。

事業主、社員、チーム、それぞれのメリットは?

産業保健企画の「顧客」は、サービスを受ける社員と、社員を雇用する事業主です。それぞれ立場によって、活動への期待は異なります。また、産業保健チームにもいろいろな考えの持ち主がいます。「禁煙のポスターを掲示すること」のメリットは何か、事業主、たばこを吸う社員、吸わない社員、産業医、保健師、衛生管理者、それぞれに説明できなければいけません。

東に社長がいれば「肺ガンの死亡者が減ります。受動喫煙対策は法律でも定められています。喫煙問題は社内でも関心度が高く、改善すれば社員の満足度が向上します。」とアピールし、

西に喫煙者がいれば「たばこをやめれば病気になりませんよ。どうせ吸うなら、いい環境の喫煙室で吸いましょう。必要なら禁煙のお手伝いをします。」と言い、

南にたばこを吸わない社員がいれば「喫煙室を整備すればにおいも漏れません。みんなが利用でき、職場のコミュニケーションを活性化できる場所も作りましょう。」と声をかけ、

北に産業保健チームがいれば「最初は小さな活動でも、社員の関心度を高め、ニーズを調査し、今回の結果を生かして、今後、効果的な活動へとつなげていきましょう。」とやる気を引き出す。

そんな産業医に私はなりたい……なぁ(笑)。

スーパー産業医への道

ニーズ調査、企画、立案、実施、効果評価と、一連の運営サイクルを回すのは大変なことです。このような手続きを踏まずにイベントだけを実施することもできます。同じような活動内容であれば、効果に大差は無いでしょう。

しかし、手順を踏んで行われた企画は社員にも受け入れられやすく、チームのモチベーションも高くなり、結果を次に生かせば、より質の高い活動へと発展していけます。何より、チームで活動すれば、ひとりで活動するよりもずっと大きなことができるのです。

「産業保健スタッフをまとめ、チームを運営すること」は、産業医に求められる上級スキルです。来週にはチーム内での会議があり、その後、会社側に提案するプレゼンの機会もあります。雨にも負けず、風にも負けず、チームの力を借りて、ぜひ、この企画を成功させたいと思っています。

医者は個人プレイ、会社員はチームプレイ

「医者は個人プレイ、会社員はチームプレイ」
最近つくづく、そんなことを考えます。
 
病院では、診断から治療までの一連の仕事をすべて医者が行います。チーム医療とは言われますが、最終的な意思決定を行うのはやはり医者。患者も医者の言うことには耳を傾けます。「医学的に正しく、治療効果が高いことが良いことだ」という共通の価値観を、みんなが持っています。

ところが会社組織では違います。会社組織の中では、チームメンバーに説明し、上司や関連部門にプレゼンし、顧客にアピールするなど、たくさんの人の手を経て仕事が動いていきます。部門や立場によって価値観や考え方が少しずつ異なるため、意見を調整したり、合意を取るのは簡単ではありません。

いろいろな本を読むと、会社の中で仕事をする産業医は「病院でのやり方」だけでなく、「会社の中での物事の動き方」も熟知しておく必要があるそうです。

例えば、社内で何か健康推進活動をしようとした時には、同じ産業保健スタッフである保健師や衛生管理者の協力はもちろん、上司や関連部門の承認も必要です。会社の中で施策を実行する最も効果的な方法は、「安全衛生委員会で企画を提案して、年次計画に組み込むこと」だそうです。そのあたりの会社の仕組みが、まだピンと来ていません。年次計画って、企画って、提案って、何をすればいいんだろう?

……そんなわけで、『産業保健マーケティング』、『企画書の書き方・まとめ方』とか、本を買ってきて勉強中です。今までじっくりと考えたことのない分野なので、なかなか大変です。