職場のメンタルヘルスのシンポジウムで発表しました

第17回 日本産業衛生学会 産業医・産業看護全国協議会のシンポジウムで、「職場のメンタルヘルス不調の早期発見・早期対応」をテーマに発表をしてきました。

メンタルヘルス不調者の早期発見を行うポイントは、次の4つです。

(1) 管理監督者へのラインケア教育
(2) 一般社員へのセルフケア教育
(3) 相談窓口の整備と周知
(4) 早期発見のための情報収集

中でも「職場の上司に早く見つけてもらって」「相談窓口に早くつないでもらう」ことが効果的です。そのためには、(1)管理監督者の教育、(3)相談窓口の整備をしっかり行うことが大切です。

また、現場の情報収集や信頼関係の構築など、予防活動の基盤を作るには、産業保健スタッフと社員が日ごろからフェイス・トゥ・フェイスの関わりを持つことが有効であると強調してきました。

著名な先生方に囲まれての発表はとても緊張しましたが、とりあえず「わかりやすい説明をする」「かっこいいスライドを披露する」という目標は達成できたかなと思います。

産業保健の世界に入って4年。まだまだ勉強中の身でありながら、このような発表の機会を与えられることはとても光栄なことです。座長の先生方、事務局の皆さん、シンポジストの先生方、発表を聞いてくださった方々に感謝したいと思います。

職場のメンタルヘルス対策について発表しました

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8月〜9月と、社外の勉強会で「職場のメンタルヘルス対策」についてお話をさせていただきました。ふだん考えていることを、人前で発表できるようにまとめたりプレゼンしたりすることはあまり無いので、このような機会をいただきとても感謝しています(いつか来る本番に備えたよい練習になります ^^;)。

さて、今回は「職場のメンタルヘルス事例の問題点」「病気と業務パフォーマンスの低下」「うつ病の症状と治療」「早期発見と早期対応のコツ」「メンタルヘルス不調を予防するための職場改善」「職場のストレス要因」「特にコミュニケーションの重要性」について、グループワークを交えながら説明してきました。グループワークでは活発に意見交換が行われ、事例への対応や職場改善の取り組みなど、たくさんのヒントが得られました。

しかし、こうした集合研修では一般論を中心に説明が進んでいくため、「実際に職場で困っている複雑な事例」に対する適切な答えを得るのは難しいようです。回復を妨げる要因、回復を促す要因、職場で困っていること、本人が困っていること、職場で工夫して欲しいこと、今後の見通しなど、それぞれの事例ですべて異なります。本人、上司、人事、産業医などの関係者が、個別のケースごとに話し合いを持つことが必要だと思います。

このような機会を与えてくださった事務局の皆さんと、グループワークで活発に議論していただいた参加者の皆さんに、改めてお礼を申し上げます。

参加者の感想(アンケートより)

  • 職場復帰してきた部下への対応に悩んでいます。グループワークでは、さまざまな職場の話を聞けて参考になりました。
  • パフォーマンスの低い部下がいて対応に悩んでいました。今までは、忙しさにかまけて、対話を避けていたように思います。少しずつ本人と話をしていこうと感じました。
  • 教育の現場では、組織のマネジメントがうまく行われているとは言えず、メンタルヘルスの問題も多いようです。どうすれば改善できるのか、参加者から色々なお話をきけて参考になりました。
  • 今まで自分が取り組んできたことの再確認ができました。常にうまく対応できているわけではありませんが、方向性が間違っていなかったと知って、自分自身のモチベーションにもつながりました。

「職場の相互支援」を促す職場改善のアイディア(実習より)

  • 部下と2週間に1度、定期的に個別に面談をする。
  • 定期的に5分間の昼礼を行い、ひとりずつ順番にミニスピーチをさせる。
  • 直属の上司だけでなく、その上の上司やメンターなど、たくさんの相談相手・相談経路を作っておく。
  • パーティションを下げる。お互いの顔が見えるレイアウトにする。
  • プロジェクトの合宿や、合同の研修などを行う。
  • 同僚の仕事の状況をふだんから共有しておき、有休を計画的に取れるよう調整しやすくする。

質疑応答(実習、アンケートより)

Q: うつ病の治療には、お薬による治療と、心理療法やカウンセリングによる治療があると聞きました。それぞれどのような効き目があり、どのような事例で効果的なのですか。

A: 病院で行われている専門的な心理療法については詳しくないのでお答えできませんが、「休息」と「薬」の2本立ての治療は、まずたいていの事例に効き目があります。しかし、それだけではすっきり治らないこともあります。その場合には、本人の仕事に対する考え方、仕事の進め方、他者とのコミュニケーションのやり方など、回復を妨げている要因は何かを探り、その解決にむけて本人の気づきや変化を促すカウンセリング的なアプローチが必要です。

Q: うつ病の発症について、会社の責任と、個人の責任と、どう考えればよいのでしょうか。

A: 家庭の要因だけが原因でうつ病になるケースもありますが、職場や家庭のいくつかの出来事が重なって調子を崩すケースも多く、一概には言えません。また、ストレスの多い職場環境があったとしても、病気になる人とならない人がおり、発病には個人的な要因が大いに関係しています。ただし、会社が適切な対応をとっていない場合には、安全配慮義務違反を問われます。

Q: 病気になると業務パフォーマンスが落ちるというのは理解できましたが、職場での配慮をどのくらいの期間続ければよいのでしょうか。また、病気を理由に退職するケースもありますが、どのように考えればよいのですか。

A: そもそも雇用とは「労働を提供する代わりに賃金をもらう」という労働契約の上に成り立ちます。労働を提供できなくなれば契約を終了するわけです。しかし、病気になった途端に契約を打ち切るのではなく、治療のため一定の猶予期間を与えることになっています(期間は会社によっても異なります)。猶予期間を過ぎても体調が回復せず、業務パフォーマンスが雇用の最低ラインを下回る場合には、労働契約の打ち切りということもあり得ます。

ストレスマネジメントの講演を行いました (Q&A)

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昨日、都内某所で「ストレスマネジメント」の講演を行いました。メンタルヘルスをテーマにシリーズ化のお話をいただき、「ストレスに強い考え方」「職場のメンタルヘルスケア」「アサーティブなコミュニケーション」の3つのタイトルで、計6回の講演を行う予定です。

今回は「今すぐできる、ストレスが小さくなる5つの考え方(1)」で取り上げたセルフケアのご紹介です。定員20名の会議室はすぐにいっぱいになり、会場のレイアウトのおかげか、途中の実習のおかげか、それともクッキーのおかげなのか、和やかな雰囲気で進めることができました。参加型の研修としては成功だったかなと思います。

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そうそう、今回ははじめて液晶テレビを使ったプレゼンを行いました。ケーブルをMacBookにつなぐだけで解像度もぴったり。1366×768ピクセルの美しい画面に映し出されたスライドは輝いて見えました。ワイド画面のスライドってかっこいいなあ。うーん、欲しくなるなあ(笑)。

参加者の声(アンケートより抜粋)

  • いつも何かに押されているような、漠然としたストレスを感じていたのですが、それがどこから来るのか理解でき、対処するヒントもわかりました。
  • 自分のストレスとどう付き合うべきか、アプローチが分からず困っていました。具体的な事例の話はとても参考になりました。
  • 実習の後のディスカッションで、物事にはいろいろ多面的なとらえ方があるのだと気づきました。
  • 自分は否定的な考え方をしがちだと思っていましたが、それはごく一般的なことで、周りの人も同じような考えをもっているのだと知り、気が楽になりました。
  • ストレスは避けられないものですが、考え方を少し工夫することでストレスの感じ方が小さくなるのなら、やってみようと思いました。

 

参加者の質問(アンケートより抜粋)

【質問】いつも明るくふるまってはいますが、ストレスにうまく対処しているというより、ストレスの元になる感情をむりやり抑えつけているような気がします。どうしたら自分の感情をうまく表現できるのでしょうか。
【お答え】「イヤだな」「苦手だな」「気が進まないな」という感情が生じると、顔がこわばる、伏し目がちになるなど、身体にサインが出ます。身体の声に耳を傾けると、自分の気持ちを理解しやすくなります。自分の感情や気持ちに気づき、それを素直に表現するための考え方や方法については「アサーティブなコミュニケーション」の回でお話します。アサーションの記事も参考になると思います。

【質問】ストレスに悩む部下がいるのですが、どこまで突っ込んで話をすればいいのか、本当に力になれるのかどうか、悩んでいます。
【お答え】「援助者」として関わるときは、自分の立ち位置と役割、できることの限界をしっかり認識することが大切です。部下の話をよく聴いているうちに、解決の糸口が引き出せることもあります。業務に影響が出ているような場合は、病気の可能性も考えて産業医や保健師に相談します。詳しくは「職場のメンタルヘルスケア」の回で取り上げます。

『こんな上司が部下を追いつめる』 !?

『こんな上司が部下を追いつめる ~産業医のファイルから~』 (荒井千暁、文芸春秋)という本を読みました。日清紡で産業医を務める著者が過労死や過労自殺などの事例を検討し、そこに登場する上司と部下の姿を考察しています。僕自身ふだん感じている事が的確に表現されていて、なるほどなぁと、とても参考になりました。
 

こんな上司が部下を追いつめる

著者は「部下を過労へと追いつめる」上司を次のように表現しています。

  1. 部下を育てようという気持ちや愛情に欠ける。
  2. 保身的で自己分析ができず他人のせいにする。
  3. 独断的で部下の意見に耳を貸さない。
  4. 目線が下げられず部下の気持ちを想像できない。
  5. 困っている部下をサポートしない。質問に答えない。
  6. 叱り方が下手。怒鳴り散らす。
  7. 叱れない、叱らない。見て見ぬふりをする。
  8. 目的や構想を語ることができない。
  9. 部下の個性を考えず一律のノルマを課す。

こんな部下がつまずく

また「上司のサポートをうまく受けられない」最近の部下の特徴として、次のような指摘をしています。

  1. PCスキルは高いが、業務の全体像がわかっておらず、主要でない作業に無駄な時間を費やす。
  2. 「電子メールは、素早いレスポンスが期待できる万能のツールだ」と勘違いしていて、重要な連絡や、ややこしい相談を電子メールだけで済ませてしまう。
  3. 対話能力に乏しく、反論されたり、意見を否定されたりすることを恐れ、会議で意見を言えない。
  4. 結論を短く言えない。細かい経緯を話さないと結論にたどりつけない。
  5. 分からないことは独力で解決すべきだと思い込み、「教えてください」と言えない。
  6. 業務の流れの全体像を教えられておらず、不向きな仕事や、やりがいのない(と思っている)仕事をしたがらない。

健全な職場風土を保つには

健全な職場風土を保つには上司の働きが欠かせません。本著では、部下を過労死に追い込まないために、次のようなことが提言されています。

  1. 仕事の全体像や目的、優先順位を教える。
  2. 相談しやすい雰囲気を作る。部下の業務量を把握し、孤立無援にしない。
  3. 過重労働の危険性を察知する。「いつもと違う」様子の部下に気づき、早めに対処する

上司と部下のコミュニケーション改善のために

過労死・過労自殺の背景として、ひとりひとりの業務量が増加して、現場に余裕が無くなったことが指摘されています。もうひとつ、さらに大きな要因として、「世代間のギャップ」などという言葉では片付けられないほどの、上司と部下の深刻なコミュニケーション不全があるようです。

次回から数回にわたって、コミュニケーション・スキルの改善や、人間関係のトラブル解決に役立つ『交流分析』の理論を紹介する予定です。ご期待ください。

この記事は、私が専属産業医をしている企業内で配信しているメールマガジンの内容を、ウェブ用に書き直したものです。

うつ病の人をうまく励ますコツ

「うつ病の人を励ましてはダメと言われるが、何と声をかければいいのか」「何ヶ月も会社を休んで、やっと出てきたが、とても治っているとは思えない」という声をよく聞きます。うつ病の同僚や部下に対して、どのように接すればいいのでしょうか。

うつ病の苦しみ

うつ状態になると、次のような状態が続きます。

1. 食欲がない。
2. 眠れない。特に朝早く目が覚め (午前3~4時)、その後まったく眠れない。
3. 疲労感がとれない。
4. 頭の回転が明らかに落ちている。
5. 今まで楽しかったことが楽しくない。それをすることが面倒だ。

特に職場で著しいのは「4. 頭の回転が明らかに落ちている」という症状です。たとえば風邪をひいて熱が出たときや、ひどい二日酔いのとき、頭の回転が落ちて仕事がはかどらないという経験があるでしょう。うつ状態の時も、それと同じようなことが起こります。しかも二日酔いと違って、そうなった原因も、いつまで続くのかもわかりません。

仕事熱心で完璧主義、まじめ人間ほどうつ状態になりやすいと言われます。そういう人にとって、この状態がどんなにつらいことでしょうか。「検査では異常が無いので様子を見ましょう」と病院では言われるが、体調は明らかにいつもと違う。集中力が無い。書類を読んでも頭に入らない。仕事はちっとも進まない。勤めを続ける自信が無い。いっそ消えてしまいたい……と、面談のときに涙をポロポロとこぼしはじめるのです。

病気のせいでパフォーマンスが一時的に落ちる

うつ病の特徴は「病気のせいでパフォーマンスが一時的に低下すること」です。治療開始が遅くなればなるほど回復も遅くなります。また、回復の途中でアクセルをふかしすぎると、すぐに調子を崩してしまいます。会社を休むほどひどいうつ病の場合は、3ヶ月の休業の後、約1ヶ月の慣らし出社を経て、さらに半年は業務制限を行うようにしないと、うまく仕事に復帰できません。

パフォーマンスの低下がきっかけで、うつ病が発見されることもあります。職場や家庭で、いつもと違う様子の変化に気づいたら、本人にそれとなくたずねてみてください。上記の「うつ状態のセルフチェック」の中で気になることがあれば、「疲れているならお医者さんに行ってみれば?」などと、産業医や精神科医に相談するよう勧めてあげましょう。

職場復帰してきた人にどう接するのか

うつ病の人と接するときの注意点として、励まさない、重大な決断をさせない、無理に気分転換に誘わない、といったことが知られています。それを聞いて「じゃあ何と言えばいいのか」と、疑問に思う人も多いでしょう。

どんなにうつ病のことを理解していても、相手を100%傷つけない言葉などありません。あまり難しく考えず、「早く元気になって欲しい」、「元気になるまで待つよ」、「ゆっくり休んでいいよ」、「力になってあげたい」と、相手を受け止め、支える気持ちを言葉で伝えることが大切です。気持ちを言葉にして伝えれば、きっと相手の心に届き、回復の助けになります。

そろそろ元気になったみたいだから、食事に誘ってみようかな、どうしようかな、と迷っているのなら、「そろそろ復帰して3ヶ月たつね。元気も出てきたようだし、また食事でもしながら話をしたいと思うんだけど、どうだろうか。しんどいなら今日は無理しないでいいよ。また今度にしよう」と、気持ちをそのまま伝えてみてはどうでしょうか。

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