職場復帰支援に欠かせない「ケースマネジメント担当者」の働き(1)

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「メンタルヘルス不調者の対応に困っている」会社はますます増えているようです。外部EAP機関と契約してストレス調査をしたり、復職支援の社内ルールを整備したりしたものの、肝心の事例対応はまだまだうまくいっていないのだそうです。

そうした人事担当者の話を聞いてみると、事情は少しずつ違うものの、共通する課題が見えてきます。それは「社内の基本的な健康管理の仕組みがうまく機能していない」という、深刻な問題です。

●基本的な健康管理の仕組み

会社は、健康問題を抱える社員に対して、休業や就業制限、配置転換などの必要な措置を行います。その際に、医学的なことがらに関して医師(主治医や産業医)の意見を聞くことを求められています。

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つまり、従業員の健康上の問題について、会社はまず社員を産業医と面接させ、職場で必要な対応について産業医の意見を求め、それから必要な人事的な措置を行うという手順をとります。

●メンタル事例対応がうまくいかない理由

従来、身体疾患やケガの管理が主流だった時代には、この健康管理の仕組みがそれなりに機能していました。ところが、メンタルヘルス不調が増えてくると、この枠組みがくずれはじめたのです。

メンタルヘルス不調者の健康状態や職場への適応について把握するには、主治医の診断書を見るだけではなく、本人と十分に時間をかけて面接し、さらに上司や人事担当者、家族などからも情報を得る必要があります。

ところが、非常勤産業医にはそのための十分な活動時間がありません。メンタルヘルス事例に関する経験不足なども加わって、結果として、社員の健康状態を十分に把握することや、職場での対応について適切な助言を行うことが難しくなっているのです。

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また、メンタルヘルス不調は回復に要する期間が非常に長く、業務パフォーマンスにも長期に影響を与えます。そのため、休業前から復職後まで、職場・人事・産業医の連携を継続することが欠かせません。しかし、こうした連携のノウハウを持つ人事担当者は少なく、関係者が力を合わせて現場を支援し続けることができなくなっているのです。

●産業医と人事の連携を強化する秘策

産業医の活動時間不足と人事担当者の経験不足を補い、産業医と人事担当者の連携を支援するための仕組みとして「ケースマネジメント機能」の強化が注目されています。

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ケースマネジメント担当者とは、メンタルヘルス不調者の職場復帰支援のための知識と技術を持ち、本人・人事・上司・産業医のそれぞれの連携を支援する、事例対応のスペシャリストのことです。

企業によっては、ケースマネジメント担当者として、メンタル事例専任の産業医を置いたり、社内に心理専門職を置いたりする場合があります。また、すでに雇用されている保健師や看護師を再教育して、産業看護職がもともと持っているケースマネジメント機能を強化するやり方もあります。

ケースマネジメント担当者の具体的な役割や業務、育成方法については、次回以降の記事で解説します。

メンタルヘルス対策:必要な「人」と「仕組み」

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さまざまな企業が、それぞれの組織の中でメンタルヘルス対策に取り組んでいます。しかし、休業者の職場復帰支援ひとつにしても「うまくいかない」と悩んでいるところが多いようです。

企業のメンタルヘルス対策、特にメンタルヘルス事例の対応(ケースマネジメント)には「人」と「仕組み」の両方を整備する必要があるだ、というのが僕の考えです。それでは、どのような人と仕組みが必要なのでしょうか。以下、僕がお世話になった先生の受け売りです。

メンタルヘルス事例対応の担当者として必要な人

  • 職場の中のことを知っている人
  • メンタルヘルス不調の病態を把握し、主治医や本人から情報を得られる人
  • 人事や職場からも情報を得られる(得ようとする)人
  • 得た情報を適切に判断し、対応のポイントを人事に説明できる人

メンタルヘルス事例対応に必要な仕組み

  • 担当者が本人と継続して面談できる仕組み
  • 上司、現場、人事、担当者の間で、情報のやり取りができる仕組み
  • 大事なことは紙に残る仕組み

こうした「担当者」の配置方法や「仕組み」の作り方は、企業の規模や、事業所の人数構成、産業保健スタッフの体制によっても異なります。例えば「事例対応の担当者」を産業医がつとめている企業もあれば、看護職や臨床心理士がその役を担っている企業もあります。

参考:生産性新聞の連載記事

日本産業ストレス学会とポメラ

産業ストレス学会とポメラ

12月5日〜6日は東京大学で行われた日本産業ストレス学会に参加してきました。

今回の学会のテーマは「産業ストレス対策の国際標準」。現時点では特にグローバルスタンダードと呼べるものはありませんが、各国ともエビデンスを大切にしながら、同じような方向で対策が進んでいるようです。

学会ではキングジムの「ポメラ」が大活躍。これまでも何度か取り上げているテキスト入力マシンです。乾電池で約20時間使えるので電池切れの心配はありません。暗い会場内では画面が見づらいので、文字サイズを一番大きくして使用しています。膝の上で入力する時は、キーボードが2つ折りにならないように、下にコートやカバンなどを敷いておきました。

講演を聞いていると「あ、あれを確認しておこう」「お、こういうことを検討してみよう」と、いろんな事を思いつきます。そんな時は文頭に「*:」というヘッダをつけてメモしておきます。後から「*:」という文字列を抽出すると、大事なアイディアをサッと整理することができるのです。

今回「*:」が付いたのは、次のような項目でした。

  • 職場巡視後の改善活動への関わり方・進め方
  • 安全衛生活動の質の評価と年間計画
  • 活動を記録・評価できるような仕組み
  • 障害者雇用について確認する事柄
  • 若手社員の離職について確認する事柄
  • ストレス調査について確認する事柄
  • ○○部の職場環境改善の今後の進め方
  • 安全衛生委員会の来年度の進め方と議題
  • 担当者のケースマネジメント能力の育成
  • 職場復帰支援の評価と改善
  • EAPの活用と質の評価
  • EAPとの契約内容の確認
  • 再発予防のためのCBT的働きかけ
  • 新入社員研修の内容
  • WEBから入手する資料

それぞれの項目の中には、さらに5〜7個くらいの小項目があったりして、ずいぶん充実したメモができあがりました。社内の担当者の協力を得ながら、ぼちぼち&確実に進めていこうと思います。

メンタル不調者の復職支援ツール

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メンタルヘルス不調者の休業期間は平均で約5ヶ月間と言われており、前後の体調不良も考えると、約1年間は労働力の損失を生じます。 休業中のケアが不適切だと回復が遅れ、その期間はさらに延びてしまいます。専門家でなくても休業中のケアを円滑に進められるようなツールを作成しました。

(1) うつ状態のステージ分類シート

うつ状態のステージ分類シート [拡大] [PDFダウンロード]

うつ状態で休業した社員に対して、適切な復職判定や回復支援を行うには、回復のレベルを正しく把握しておく必要があります。この「うつ状態のステージ分類シート」を用いると、本人・担当者・人事・上司・家族・主治医などの関係者間で、以下のような「共通用語」を用いて対応することができます。

  • 回復初期:睡眠時間が極端に長く、一日中寝ている。
  • 生活安定期①:夜に寝て昼に起きる。家の中でごろごろすることが多い。 疲れやすい。
  • 生活安定期②:日中、横にならず起きていられる。少しながら外出できる。意欲も少し戻る。
  • 復職準備期①:午後から短時間なら外出できるが、長時間や人混みは疲れる。
  • 復職準備期②:午前中からも外出できるようになる。集中力や理解力も戻ってくる。
  • 復職準備期③:出社を模した通勤訓練が、継続してできるようになる。
  • 復職可能:フルタイム5日間の出勤が1ヶ月続けられる状態になる。疲れも翌日には回復する。

(2) 生活記録表

生活記録表 [拡大] [PDFダウンロード]

回復のステージを評価するために、この「生活記録表」を用いて、睡眠時間や外出時間など休業中の生活の記録を付けてもらいます。こうした記録をもとに実績に基づいて回復の度合いについて判断することが大切です。同様の記録用紙を主治医からもらっている場合もあります。

(3) 復職準備チェックシート

復職準備チェックシート [拡大] [PDFダウンロード]

主治医の考える「復職可能レベル」と、会社側の考える「復職可能レベル」にはギャップがあります。再発のリスクを避けるためには、会社側の求める「復職可能レベル」に到達しているかどうか、客観的に評価する必要があります。

このチェックシートは「病休・休職中のうつ病患者の復職可能性判定を客観化するための 評価尺度と質問紙の開発 」の質問紙を一部アレンジしたもので、復職可能性を評価する材料になります。

こうしたツールを使うことで、本人の回復状況や復職までの道のりについて関係者間で共有できれば、職場復帰が円滑に進むようになります。

職場復帰のトラブルを避ける基礎知識:うつ状態の回復の5つのステップ

あちこちの企業の担当者に話を聞くと、メンタルヘルス不調者の職場復帰支援でもっとも難しいのは「復帰のタイミング」だと言います。特に、体調が十分に回復していないうちに復帰したがる社員への対応に苦慮しているそうです。

こうしたトラブルの背景には、メンタルヘルス不調の回復の過程や、職場復帰のタイミングについて、本人と関係者の認識が統一されていないという問題があります。

うつ状態の回復の5つのステップ

うつ状態をともなう休業事例では、一般的に次のような5つの段階を経て回復します。

第1段階:会社を休みはじめた直後、一時的に不眠などの症状が悪化することがあります。仕事は大丈夫だろうか、みんなに申し訳ない、本当に治るのかと不安がつのるためです。この時期は数日間から数週間続きます。

第2段階:本格的に休息できるようになると、一日中寝てばかりになることがあります。ごろごろと横になって過ごし、ほとんど起きられません。この時期は2週間から1ヶ月程度続くようです。

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第3段階:起き上がって身の回りのことができるようになります。好きなことを少しだけやってみようという気持ちも出てきます。買い物や散歩など、少しだけ外出もできます。この期間は1〜2ヶ月続きます。

第4段階:家の中の生活が安定し、さらに多く外出できるようになります。ただし、人の多い場所や、電車に乗ったりすると疲れてしまうようです。この期間も1〜2ヶ月続きます。

第5段階:起床時間や就寝時間など生活のリズムが整い、通勤を模した外出が安定してできるようになります。集中力や判断力が回復し、復職のことを落ち着いて考えられるようになれば、職場復帰の準備が整います。休職開始からここまで、一般的には3〜4ヶ月かかりますが、1年以上かかる事例もあります。

復職開始のタイミングはそれぞれの会社の制度によって異なる

しかし、第5段階まで回復しても、それぞれの会社の制度の違いによって、復職を開始するタイミングは異なります。

A社では「半日勤務からスタートする最大3ヶ月間のリハビリ出社」の制度があります。休業開始から3〜4ヶ月で復帰するケースが多いようです。

B社では「コアタイムからスタートし、2週間で終了するリハビリ出社」の制度があります。A社よりもハードルが高いため、4〜5ヶ月かけてしっかり体調を整えてから復帰するケースが多いようです。

C社ではフルタイム未満の復職を認めていません。そのため、図書館などを利用した自主的な復職訓練や、専門の機関を利用した出社訓練を休業中に行っています。こうなると出社まで6ヶ月程度かかるそうです。

回復を支援する休業中の面談のやりかた

職場復帰をスムーズに進めるためには、自社の復職制度をよく理解した上で、本人にタイミングよく説明し、不安を取り除くことが大切です。そのためには「休職開始時から復職後まで、月1回程度、産業保健スタッフと本人が面談を行う」という方法が有効です。

面談では、自宅での過ごし方や回復の状態を本人と一緒に確認します。また、主治医や家族とどんな話をしているのか教えてもらいます。体調の変化や気持ちの変化、復帰への不安について話をしながら、次の段階に進むための工夫や注意点について考えていきます。病状が安定してきたら、調子を崩す要因や、調子を回復させる要因についても話をしていきます。

こうした面談を続けることで、本人の回復の段階を確認しながら、休業中の不安を軽減し、復帰のタイミングについて適切なイメージを持ってもらうことができます。また、発症の背景や原因について時間をかけて話をすることで、職場復帰時の環境調整や、再発防止のための貴重な情報が得られます。さらに、面談の結果を人事や職場にフィードバックすることで、職場復帰にむけた関係者の認識を統一することができるのです。