おとなりの職場に学ぼう! 職場巡視良好事例集2006

Junshi Good Practice2006

私が産業医として勤務している会社では、定期的に職場巡視を行っています。2006年度に私が参加した計16回の職場巡視の中から、良好事例を50ヶ所とりあげた事例集を作成しました。

職場巡視の3つの目的

産業医と衛生管理者による職場巡視は、労働安全衛生法に基づいて行われています。職場巡視には大きく3つの目的があります。

(1) 安全・健康・快適職場作りの視点から、作業環境と作業のやり方を点検する
(2) 実際の職場や仕事の様子を観察して理解する
(3) 産業保健スタッフと社員の垣根を低くし、相談窓口として機能しやすくする

「仕事による健康影響」や「職場の健康影響」を考える上で、現場を実際に見ることはとても大切です。職場巡視は産業医の最も重要な活動のひとつです。それに「いろんな職場や仕事を見てみたい」と思って産業医になった私にとっては、とても面白い仕事でもあります。

職場巡視の良好事例集

2006年度は、私の担当する2つの地域で合計16回の職場巡視に参加しました。毎回の巡視報告書とは別に、毎年1回「良好事例集」を作成しています。現場の良好事例や改善事例を共有することで、波及効果があればと考えています。

職場の「ご近所づきあい」を活性化する3つのしかけ

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最近は職場からも「ご近所づきあい」が無くなり、従業員のコミュニケーションが薄れ、トラブルやストレスの原因となっています。「ご近所づきあい」を回復させ、快適な職場を作るための「しかけ」を紹介します。

 
ご近所づきあいが無くなった職場

 核家族化や団地化が進み、地域社会から「ご近所づきあい」が失われて久しいと言われています。近隣のコミュニケーションが薄れ、住民同士の信頼関係や助け合いの精神が乏しくなった結果、地域でのトラブルや犯罪が増加しています。

 現在、同じことが職場でもおきているようです。個を尊重する時代となり、価値観や雇用形態が多様化し、仕事の専門分化が進む中で、「隣の部署 (隣の席の人) は何をしているのか知らない」「自分の仕事だけしていればよい」という風潮が広がってきました。

 
なかなか解決できない「ご近所の困りごと」

 産業医の重要な仕事のひとつに、作業現場やオフィスを定期的に視察する「職場巡視」があります。安全と健康の確保、快適な職場作りの観点から、作業環境や作業の進め方をチェックしています。

 職場巡視をしていると、職場のわずかな問題がいつまでも放置され、従業員のストレスやトラブルの元になっているというケースをよく目にします。

(1) 昼休みに真っ暗になる職場
・省エネのため自動的に明かりが消える
・暗くて作業しづらい、お弁当がおいしくないと不満に感じている
・必要であれば部分的に点灯するというルールがある
・しかし、誰も明かりを点けようとしない

(2) 疲れたと言えない職場
・PC作業を1〜2時間も続けていると肩や腰が痛くなる
・しかし周囲に気兼ねして、席を立ったり休憩したりできない
・喫煙者には喫煙室があってうらやましいと思っている

(3) 暑い(寒い)と言えない職場
・暑さや寒さを我慢して仕事をしている
・どこに(誰に)言えばよいのかわからない
・ついイライラしてしまう

(4) あいさつが無い職場
・誰も出社時や退社時のあいさつをしない
・新入社員があいさつをすると「静かにしろ」と注意される
・みんな個人ブースやパーティションに姿が隠れている

 
 どれもみんな、ささいなことばかりです。しかし「困っていても、誰に相談すればいいかわからない」「周りの人が困っていることにすら気づかない」という傾向は、メンタルヘルス疾患などの深刻な問題に発展することもあります。

 
私が経験した問題解決の「妙案」の数々

 失われた「職場のご近所づきあい」を回復するには、どのような方策があるのでしょうか。私が経験した当社の事例を紹介します。

 
(1) フロアごとの「町内会」で問題解決

 ある事業所では、パーティションの無い広々としたフロアに、いろいろな部門が同居していました。一見、風通しのよい良好な職場環境のようですが、職場巡視をしてみると、さまざまな問題が浮かび上がってきたのです。

 それは「これはうちの部門の管轄ではない」というセクショナリズムの横行です。また「これはフロア全体の問題なので、うちの部門だけでは決められない」と、職場環境の問題が何ヶ月も宙ぶらりんになっていました。

 ある時、総務担当者が音頭を取り、部門の代表者が集まる「町内会」を各フロアごとに組織しました。部門の垣根を越えてフロア内の問題について話し合うようになり、また、困りごとの相談窓口としても機能するようになりました。そして、共用部分のレイアウトの改善、倉庫内の整理整頓、喫煙室の利用ルール作り、避難経路の確保など、手つかずだった問題が次々と現場で解決されるようになりました。

 
(2) 視線のふれあいを増やすレイアウト

 また、あるソフトウェアの開発部門では、180cmもある高いパーティションのせいで、仕事をしているメンバーの顔が全く見えない状況が続いていました。上司と部下、同僚同士のコミュニケーションが阻害され、問題となる事例も発生していたのです。

 ある時、部門長の英断で、すべてのパーティションを120cmのものに交換しました。立ち上がるだけで周囲を見渡せるようになり、相談や報告など、現場のやりとりがずいぶん改善しました。

 別の職場では、通路を挟んで背中合わせに座るのではなく、L字型の机を使い、斜め向きに座るようにしました。デスクで作業をしていても、少し顔を上げるだけで通路を行き交う人と視線が合うようになり、チーム内のコミュニケーションが増えたそうです。

 
(3) 上司の率先した行動が部下の行動を変える

 例えば「ノー残業デー」など、社員に指示を与える時には、社員が自主的に行動してくれることを期待しがちです。ところが多くの社員は「上司や同僚に気兼ねして、なかなか行動できない」と言います。そんな時は、上司が率先して行動することが重要なようです。

 ある上司はノー残業デーを自ら実践しています。忙しい部門なので、早く帰るためのやりくりはいつも大変ですが、自分自身や部下の健康管理のためにも続けていきたいと言います。

 ある上司は、昼休みに照明が消えた後、在席しているときには自分のデスクの周りだけスイッチを入れるようにしています。それを見た部下も、必要な時には頭上の照明をつけるようになったそうです。

 ある部門長は、部内の雰囲気が暗いことを心配して、毎朝、社員と顔を合わせるたびに大きな声であいさつをするように心がけました。「今度の部門長はよく話を聞いてくれそう」と、部下からも好意的な反応が得られています。

 
ご近所づきあいを活性化するしかけ

 職場のご近所づきあいを活性化することは、これからの企業経営や組織運営の大きな課題です。そのためには、コミュニケーションの機会を増やすさまざまな「しかけ」と、上司による率先した行動が必要です。

この記事は、私が専属産業医をしている企業内で配信しているメールマガジンの内容を、ウェブ用に書き直したものです。

職場巡視の報告に最適なソリューション

職場巡視データベース

職場巡視とは、安全で快適な職場作りのための、もっとも重要な産業保健業務のひとつです。「職場巡視データベース」は、デジタルカメラで撮影 した写真をふんだんに使った、わかりやすい職場巡視報告書を短時間で作成するための FileMaker ソリューションです。 各職場の衛生管理者、産業医、保健師などの産業保健スタッフの方に使っていただくために開発しました。

 
職場巡視データベースは4種類の書類を作成できる

職場巡視データベースでは、巡視中に撮影したデジタルカメラの写真をインポートし、指摘コメントを記入した「職場巡視報告書」(現場で対策を記入する対策書も兼用)と、安全衛生委員会などでプレゼンするときに使う「スライド」、報告書を現場に送付するときの「連絡書」、報告書を作成するときに同行者にコメントの記入を求める「ドラフト」の 4 種類の書類を作成できます。

職場巡視データベースで作成できる書類

動作環境
・ FileMaker Pro 8.5 (無料試用版でも可)
・ Windows 2000、Xp、Vista、Mac OS X

ダウンロード
職場巡視データベースのマニュアル (880KB)
職場巡視データベース 1.10 をダウンロード (2.9MB)

最新版はこちらのページからダウンロードしてください。
※ 使用方法など、詳しくはマニュアルをご覧下さい。
※ ぜひ皆さんの職場でご利用いただき、ご意見をお寄せください

FileMakerで職場巡視データベースを作ったよ

僕の趣味は、ムダに高い PC スキルをむりやり仕事に活用すること。最近、FileMaker を使って「職場巡視データベース」を作ってます。職場で披露したところ好評だったので、会議でプレゼンさせてもらうことになりました。ドキュメントを整えた後、一般公開する予定です。

 
職場巡視というのは、安全や健康の視点から作業現場をチェックして回るという産業医の大切な仕事です。巡視の後で、写真を貼り付けた報告書やプレゼン用のスライドを作るのですが、けっこう大変な作業なんです。

もちろん、Mac でも Windows でも使えます。皆さんのお役に立てていただければ幸いです (画像を拡大)。

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あなたの足元は大丈夫?

ある会社の調べでは、労災の1~3割が転倒による負傷で、くつに原因のある事例が多かった。高いヒールのくつや雨の日に滑りやすいくつは要注意。また、ケガをしたときは直ちに上司を通じて関係部署に連絡し、早めに病院を受診しよう。
 

■あなたの足元は大丈夫ですか?

きのうの会社帰りのこと。女性が駅から出てきたところ、排水路の2cmくらいの隙間にハイヒールが挟まってしまい、靴は脱げるわ、はだしで2~3歩よろめいて転びそうになるわ、おまけにハイヒールはなかなか抜けないわと、ちょっと大変なことになっている場面に出くわしました。

マンガのような状況に吹き出しそうになったのですが、もし転んでケガでもしていたら立派な通勤災害です。ちょっとしたところに危険が潜んでいるのだなあと、自分がハイヒールを履いていない幸運に感謝したのでした。

当社の労災の状況を調べてみたところ、都市圏では、転んだりつまずいたりといった事例が数割を占めていたそうです。女性ではヒールが高い靴、男性でも雨の日にすべりやすい靴は特に危険です。通勤時と移動時の安全について、文字通り「足元から見直す」ことが必要なのかもしれませんね。

■ケガをしたら速やかに上司に報告を

業務上や通勤途中のケガは「労災」として扱われ、治療費や休んだ間の賃金の補償などを受けることができます。「災害ゼロ」を目標にいろんな会社が災害防止に取り組んでいますが、実際はすべったり、転んだり、クルマをぶつけられたり、手が挟まったり、毎月いろいろな災害が発生しています。

社内のルールによると、災害が発生したとき、ケガをした社員は(その程度にかかわらず)当日中に直属上司にそのことを報告し、そして上司は健康管理室の○○さん(専任衛生管理者)に連絡し、労災の手続きについて確認することになっています。……まあ、これもイントラネットに昨年掲載された「労災について」という記事の受け売りなんですけどね。

その記事の最後には「軽傷のようでも早めに病院を受診して下さい。打撲のようで実は骨折だったという事例もあります」と書かれています。実は、今年に入ってから、それと非常によく似た事例が発生しており、病院の受診も労災の申請も遅れたということがありました。イントラネットに情報を掲載しても、本当に必要なときに活用されるとは限らないのだなあと感じました。

皆さん、ケガにはどうかくれぐれも気をつけて。もしもケガをしてしまったら、ただちに上司を通じて健康推進室まで連絡するようにお願いします。また早めに病院を受診するようにして下さい。

この記事は、私が専属産業医をしている企業内で配信しているメールマガジンの内容を、ウェブ用に書き直したものです。