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攻撃的な人・受身な人のトラブルシューティング (後編)

「攻撃的な人、受け身な人」のトラブルシューティング(前編)の続きです。

誰かにノーと言うことは、相手にとって耳の痛い内容(批判)を伝えることです。批判の対象には、生まれ、性別、人格、信条、文化、感情などの「批判されるべきでない領域」と、行動、考え方、言い方、態度などの「批判されてもいい領域」の2種類があります。
 

誰かに批判された時、それが当たっている場合には、素直に認めてしまいましょう。批判が当たっていない場合や、「あなたは、いつも○○だ」という、一方的な決めつけやレッテル貼りに対しては、あいまいな点を具体的に聞き返します。

相手にノーと言うことは、相手の行動によって自分がどう感じたか、自分の気持ちを言葉で伝えることです。自分の状況を伝えた後で、相手の意見にも耳を傾け、今後どうしたいかを話し合う。それが職場における適切なノーの言い方です。

相手にノーと言えないAさんは「上司の命令は断ってはいけない」「できないと言うのは、能力が無いと言うことだ」「相手の気分を害することは致命的だ」という強い思いこみを持っています。しかし、たとえ相手が年上でも、お互いに自立した人間同士なのですから、卑屈にならずに堂々とコミュニケーションしていいのです。

相手にノーと言うためには、ノーの的を絞ることが大切です。Aさんは「Bさんに、大きな声で、長い時間、みんなの前で、注意されるのがイヤだ」と思っていることに気づきました。そんな場面になると、Aさんは「おびえてしまって何も言えなくなる」のです。だからBさんに「ふつうの大きさの声で注意してほしい」と思っています。

相手が怒っている時には、何を言っても火に油を注ぐだけです。しばらく時間をおいて、冷静に話ができる機会をうかがいましょう。直接話をするのが難しければ、上司や同僚に同席してもらったり、伝えてもらうといいでしょう。

怒りの感情はBさんのものです。怒りを感じること自体は批判されるべきではありません。けれども、それをどう表現するかはBさんの責任です。

「○○は〜であるべきだ」という「べき思考」が強いと、そうでない人物や物事に出会った時に怒りの感情が生まれます。また「批判を受けることは致命的なことだ」という思いこみが強いと、何か言われるとすぐに自分への個人攻撃だと受け取って、過剰反応しがちです。

カッとした時につい大声を出してしまうと、自分の声が刺激となり、ますます怒りが強くなります。そうなると何を言っても、相手には「あなたが怒っているということ」しか伝わりません。相手を傷つける言動をしてしまう前に、安全な場所に避難しましょう。

頭の中を整理するためには、「自分はいったい、何に対して腹をたてているのか」「どうしてこんなに腹がたつのか」「相手に対して、自分は何を望んでいるのか」「相手の責任範囲はどこまでで、自分の責任は何か」と、自分自身に問いかけてみましょう。

組織を維持していくために、上司として、部下にノーと言うべき場面があります。しかし、非難したり怒りをぶつけたりするだけでは、相手は心を閉ざしてしまいます。

うまくノーと伝えるためには「今から20分ほど話をしたいんだけど」などと予告をして、相手に心の準備をさせます。話は肯定的に始め、批判のポイントはひとつに絞りましょう。言いにくいことがある時は「気を悪くするかと思って、なかなか言えなかったんだけど」と気持ちを口に出すと話をしやすくなります。

相手に「建設的なノー」を伝えるためには、まず、なぜ相手にノーと言うのか、共通の大きな目標を示します。次に、相手の行動や態度に焦点を当て、具体的な事実を客観的に指摘します。その時、卑屈になったり威圧的になったりせず、対等な目線を心がけます。

自分の言い分を述べたら、相手の状況や言い分にも耳を傾けましょう。問題点を早く指摘しなかったのはCさんの責任です。「もっと早く言うべきだった」と自分の非を先に認めて「お互い様」という雰囲気を作ると、話がスムーズに進みます。

相手を変えたい、自分を変えたい…でも、変わらない?

読者の皆さんから「ストレスの源は相手なのに、なぜ自分が努力しないといけないのか」「相手に言動を改めさせる記事を書いてほしい」という意見をいただくことがあります。

そんな時、いつも「過去と他人は変えられない」という有名な言葉を思い出します。しかし、がっかりすることはありません。相手をすぐに変えられなくても、自分のコミュニケーションのパターンを変えることで、自分と相手の人間関係のあり方を変えることができます。そして人間は、人間関係の中で変化していく生き物なのです。

今回の記事では、Aさん、Bさん、Cさんの3人に登場してもらいました。皆さんのまわりでも、よく似た出来事が起きているかもしれません。問題解決のヒントになれば幸いです。

この記事は、私が専属産業医をしている企業内で配信しているメールマガジンの内容を、ウェブ用に書き直したものです。

参考記事
ELECTRIC DOC. – アサーション (1) ~自分の意見をさわやかに表現する~
ELECTRIC DOC. – アサーション (2) ~さわやかに自己表現できない理由~
ELECTRIC DOC. – アサーション (3) ~問題解決のためのアサーション~
ELECTRIC DOC. – 「いつもと違う」部下に気づいたら……?

参考文献
『「NO」を上手に伝える技術』(森田汐生、あさ出版)
『アサーショントレーニング 〜さわやかな「自己表現」のために〜』(平木 典子、日本・精神技術研究所)

攻撃的な人・受身な人のトラブルシューティング (前編)

攻撃的なコミュニケーション・パターンを持つ人が職場にいると、周囲の人間関係をギクシャクさせてしまいます。また、受身のコミュニケーション・パターンを持つ人は、そうしたストレスを一身に受けてしまいがちです。
このような状況を改善するには、どうすればいいのでしょうか。今回は、ある職場での事例を取り上げます。攻撃的な人、受身な人、その上司、それぞれの悩みを聞いてみましょう。
 

事例

Aさんは入社3年目。今年の4月に現部署に配属されました。ところが、一緒に仕事をしているベテランのBさんが、Aさんの仕事ぶりを細かくチェックし、厳しく指摘をしてくるのです。最初はおだやかな口調なのですが、興奮してくると声がだんだん大きくなります。「こんなコトもわからないの?」「バカじゃないの?」というBさんの剣幕に、Aさんは何も言えず黙りこんでしまいます。上司のCさんは、その様子を困った顔で見ているのですが……。

Aさんの立場から

今の仕事にまだ不慣れで、ミスや不備が多いのは認めますが、あんなに細かく、昔のことまで蒸し返して、みんなの前で一方的に叱られるのには納得できません。何か言っても、その10倍くらいの勢いでどなり返されるし……。わからないことがあっても、怖くて聞けず、困っています。
最近は、Bさんのことが頭に浮かぶだけで気が滅入ります。会社に行きたくない時もあります……。上司のCさんに相談しようとしたこともあるのですが、肝心のBさんとのことは、うまく話せませんでした。結局、職場は個人のために何もしてくれないんですよね。会社を辞めようかと思うこともあります。

解説
仕事のミスを激しく責め立てるBさんの態度に怒りを感じていると同時に、ミスをしてしまった自分や、Bさんに何も言い返せない自分を情けないと思っています。何もしてくれない上司や職場への失望感もあります。このままだとストレスからうつ状態になるおそれがあります。

Bさんの立場から

Aさんは、何度も同じミスをするし、仕事も遅いし、基本的なところが何もわかってない。聞いてくれればいいのに、うじうじ悩んでいるばかりで、見ていてイライラします。つい口調がキツくなりますが、仕方ありません。
ここのところ特に忙しいのに、Aさんのせいでますます手間が増えて困っています。使えない新人じゃなくて、ベテランを補充してくれればよかったのに。Cさんは上司ですが、具体的な業務のことは何もわかっていないんです。

解説
なかなか仕事を覚えず足を引っぱるAさんや、そんなAさんを自分のセクションに配置した上司に腹を立てています。攻撃的な態度のために周囲から敬遠されていることにも、うすうす気がついていますが、「自分は絶対に悪くない。相手が100%悪いのだ。」と常に思っています。

Cさんの立場から

最近うちの部署も忙しくなってきたので、Aさんには早く戦力になって欲しい。ただ、Bさんによく叱られているようだ。最近は元気がなくて、何だか顔色も悪い。先日、Aさんから相談を受けることがあったが、具体的なことはあまり話してくれなかった。心配だが、どう声をかけたものか……。
Bさんはベテランで、仕事はよくできる。ただ、周囲に対して口調がキツい。何か言うと10倍くらい返ってくるし、意見が異なるとすぐにかんしゃくを起こすので困っている。そろそろ後輩の指導や育成ができるようになって欲しいのだが……。

解説
AさんとBさんの問題に気づいてはいますが、上司としてうまく対応できていません。具合の悪そうなAさんには、どう声をかければよいのかわかりません。また、Bさんには、もっと適切な態度でAさんを指導して欲しいのですが、どう言えば素直に聞いてもらえるのかわかりません。このままでは仕事もうまく回らないし、Aさんは病気になりそうだし、職場の雰囲気も気まずくなるし、実はとても困っています。

相手にうまく「ノー」を伝えること

攻撃的なコミュニケーション・パターンを持つBさんのことで周囲が困っているというケースです。この事例の登場人物に共通している問題点は「うまく相手にノーと言えない」ということです。

・Aさんは「そんなに激しい口調で叱らないで欲しい」と言えない。
・Bさんは、仕事のミスを指摘するとき、いつも攻撃的になってしまう。
・Cさんは「先輩として適切な態度で指導して欲しい」と言えない。

相手の気分を害さずに、あまり攻撃的にならずに、今後の人間関係にひびが入らないように、上手に「ノー」と伝えるためのポイントは、どこにあるのでしょうか。次回【アドバイス編】に続きます

(この記事は、私が専属産業医をしている企業内で配信しているメールマガジンの内容を、ウェブ用に書き直したものです。)

カゼとインフルエンザを予防する最新手洗い法

毎年11月〜4月はインフルエンザのシーズンです。カゼやインフルエンザのウィルスは、咳やくしゃみと一緒に飛び散り、机の上やドアノブ、つり革などに付着します。そういった場所をさわった手で、目や鼻や口にふれると、ウィルスが体内に侵入する原因になります。

毎度同じことの繰り返しになりますが、カゼやインフルエンザの予防には手洗いがとても有効です。ところが、ふつうに手を洗うだけでは、指先と爪の間、指と指の間、手のしわなどに汚れが残っています。ウィルスを十分に洗い落とすには少々コツが必要です。

洗面所に貼って使えるスーパー手洗い法

そこで、カゼ・インフルエンザを予防できる効果的な手洗い法についての資料を作りました。印刷した後、半分のサイズに切って、ぜひ職場や家庭の洗面所に貼り付けてご利用ください。


★インフルエンザ予防のための手洗い(PDF形式 1.2MB)

帰宅時、調理の前後、飲食の前には必ず「きちんと」手を洗いましょう。目や鼻をさわるときには、清潔なティッシュペーパーを使うようにしましょう。

参考記事
カゼとインフルエンザの見分け方は?
2005年・インフルエンザのガイドライン
2005年風邪対策のトレンドは「水うがい」

この記事は、私が専属産業医をしている企業内で配信しているメールマガジンの内容を、ウェブ用に書き直したものです。

魔法のコミュニケーション術 「あいさつ+1」「ありがとう+1」

「職場のコミュニケーションを活性化しましょう」と言われても、じゃあ何をどうすればいいのかと困ってしまいます。誰でも簡単に実践できる魔法のコミュニケーション法、「あいさつ +1」と「ありがとう +1」を紹介します。
 

上司になかなか相談できずに困っている部下、そんな部下の悩みに気づいてさえいない上司。以前の記事(こんな上司 vs こんな部下、困ったときの対処法)で、この深刻な状況を打破するためには、お互いに積極的にコミュニケーションをとることが必要であると述べました。

しかし、「さあ、コミュニケーションをとりましょう」と言われても、何を話せばいいのか、どうすればいいのか、戸惑いを感じる人が多いのではないでしょうか。

今回の記事では、「コミュニケーション」の正体について専門的に解説したあとで、誰でも簡単にできるコミュニケーション改善法を2つご紹介します。

コミュニケーションは「ストローク」のキャッチボール

コミュニケーションは、よくキャッチボールに例えられます。キャッチボールのボールに相当するものを、専門用語で「ストローク」と言います。つまり、コミュニケーションとはストロークを交換することなのです。

ストロークは、相手に幸福や喜びを与える肯定的なストローク、相手を不愉快・憂鬱にさせる否定的なストロークに分類されます。また、話す内容や声の大きさなど、言語によるストロークと、表情、態度、行動などで表される非言語のストロークがあります。それぞれどんなものがあるか、次の表を見ながら考えてみましょう。

 

ストロークは「心の栄養」

ストロークについて、もう少し詳しく説明すると「その人の価値や存在を認めるための言動や働きかけ」と言うこともできます。人はストロークなしには生きられないと言われており、ストロークは「心の栄養」とも言われます。また、幼少期に両親から与えられたストロークが、精神の発達や人格形成に大きな影響を与えることも知られています。

気持ちのよい人間関係とは、肯定的ストロークを与えあう関係です。一般的に、よい人間関係はますますよくなり、悪い人間関係はますます悪くなります。なぜなら、よい人間関係では肯定的なストロークが活発に交換され、悪い人間関係では否定的なストロークが交換されるか、あるいはストロークが全く交換されないからです。このことは「裕福な者はますます裕福になる」という経済の法則に似ているため、ストローク経済の法則と呼ばれています。

良好な人間関係を築くための魔法のテクニック

良好な人間関係を築くということは、できるだけ多くの肯定的ストロークを交換することです。とても簡単で、効果的な方法を2つご紹介します。

 「あいさつ +1」

「あいさつ +1 (プラス1)」とは、あいさつに何かひとつストローク(情報)を追加して返すという方法です。あいさつは「相手の存在を承認する」という、基本的な肯定的ストロークです。しかし、何となく儀礼的なあいさつを交わしているだけでは、人間関係は発展しません。あいさつに+1のストロークを加えることで、会話のきっかけが生まれ、ストロークの交換がはじまるのです。

「あいさつ +1」のサンプルを紹介します。次の文で下線部がある場合と、ない場合とを比べてみてください。

「おはようございます。」
「おはよう。今日も暑くなりそうだね。

「おはようございます。今日も雨ですね。」
「おはよう。昨日からずっと降ってるね。うちの周りは大変だったよ。

「ありがとう +1」

日本人は「以心伝心」「あうんの呼吸」を大切にする民族です。「言わなくても通じるだろう」と、ちょっとしたことは言わずにすませる傾向があります。ところが、実際には黙っていては何も伝わりません。ちょっとしたこと、当然のことでも「ありがとう」「助かるよ」と感謝の気持ちを口に出すことが、とても大切です。ただし、せっかくの「ありがとう」も、相手に気持ちが伝わらなければ効果がありません。

「ありがとう +1」とは、「ありがとう」と言うときに、作業の手を止めて、相手のほうにちゃんと顔をむけるというテクニックです。「ありがとう」という言語によるストロークに、体の動作や顔の表情など非言語のストロークをプラスするのです。たったこれだけで、あなたの「ありがとう」は数段レベルアップします。

やってみよう! +1のコミュニケーション術

「あいさつ +1」、「ありがとう +1」は、職場だけではなく、家庭、学校、地域社会、あらゆる場面で使える方法です。初対面の相手にも、顔なじみの相手にも、同じように使いやすく、同じように効果があります。

「コミュニケーションは難しい」と尻込みせずに、まずは「あいさつ +1」と「ありがとう +1」を心がけてみましょう。どんな人間関係も、ストロークを交換した数だけ、良好なものになっていくのです。

参考資料

「交流分析入門」 (桂 戴作、杉田 峰康、白井 幸子、発行:チーム医療)

この記事は、私が専属産業医をしている企業内で配信しているメールマガジンの内容を、ウェブ用に書き直したものです。

産業医のメールマガジン 59,800通の効果評価

大阪地区で配信している「産業医のメールマガジン」。2005年1月の創刊からすでに50回を数えました。先日の読者アンケートには、お忙しいところ307件(26%)の回答をいただき、ありがとうございました。結果を参考に、メルマガの効果を分析してみました。次の報告書をご覧ください。
 
 産業医のメールマガジン 59,800通の効果評価 (PDF: 215 KB)

報告書の内容から

以下、報告書の内容から、いくつか抜粋して紹介します (詳しくはPDFファイルをご覧下さい)。

「アンケートに回答してくれた人」は、もともとメールマガジンの熱心な読者であると予想されます。そこから得られた数字を円グラフにするのは、公平な集計という点ではかなりの反則技ですが、「以前より相談しようと思う」、「以前より身近に感じる」人がたくさんいたのは、素直にうれしかったです。

一般的に、健康推進室の社内広報活動を行うと、サービスの認知度が向上するため、相談件数が一時的に増え、病気の社員の数(発見数)も増加します。ところが、メルマガを開始してからも、健康推進室や産業医への相談件数はほとんど増えませんでした。その理由としては、「メルマガの広報効果がまったく無く、認知度は変化しなかった」、「全社員面談などを行っているため、すでに認知度は最大値に達していた」などが考えられます。

アンケート直前に配信した「こんな上司が部下を追いつめる?」という記事のインパクトが強かったせいか、上司と部下に関する回答が意外と多くなりました。「ストレス」と「ダイエット」というと、マーケティングの魔法のキーワードですが、確かにニーズは高いようです。このニーズにどのように対応するのか、検討が必要です。

社員の方から、ふだん、こんなにコメントをもらうことはありません。自分の仕事が「認められる」ことは、モチベーションを非常に高めてくれます。フィードバックの重要性を実感しました。アンケートの回答を見るたびに元気が出てきます。

今後の展開について

今回、アンケート調査を行うことで、皆さんの問題意識(ニーズ)をいくぶん定量的に把握することができました。「仮説」の裏付けをもうしばらく取ってから、今後、皆さんの健康により役立つ企画を行いたいと考えています。

ところで、よく「このメルマガを他の事業所に展開して欲しい」というご意見をいただきます。コンテンツの活用という点では、利用者の増加はとても有意義だと思います。しかし、全国に展開するには、各事業所のそれぞれの活動内容と整合性を取るなど、多くの手続きが必要です。もうしばらくの間は積極的な全社展開を行わず、地域密着型の配信を続けていきたいと思います。

この記事は、私が専属産業医をしている企業内で配信しているメールマガジンの内容を、ウェブ用に書き直したものです。