こんな管理職は管理職失格だっ!

「何時から何時まで仕事をしていますか?」「月の残業時間はどのくらいになりますか?」
社員との面談で必ずたずねる質問です。ほとんどの方はスラスラと答えてくれますが、中には「そんなこと、考えたこともありません」などと言い出す人もいて、とても驚かされます。その後は、たいていこんなセリフが続きます。「だって、管理職ですから。」
忙しすぎて残業時間を気にしていられない管理職
このように答える管理職の方は、ほぼ例外なくハードワーカーです。いくつもの現場を飛び回っていたり、部下を持ちながらも自分の担当分を持っていたりと、日々忙しく仕事をしています。
管理職は労働時間ではなく成果で評価されることになっています。もちろん、成果を上げるために働かなければならない時期もあるでしょうし、職務を果たすのが第一だという価値観も理解できます。しかし、時間管理の対象からはずれて出退勤時刻の入力をしなくなると、自分の労働時間への関心が薄れてしまうようです。(※当社ではタイムカードを使っておらず、出退勤時刻は従業員が各自でPCに入力しています。)
長時間残業は有害業務であるという考え方
サラリーマンにとっての「時間」には大きく3つの意味があります。ひとつは「賃金」に直接換算できる時間。もうひとつは遅刻や欠勤などの「勤怠」としての時間。このふたつに関しては、黙っていても会社はちゃんと管理をします。しかし、なかなか注目されないのが、みっつめの「健康上のリスクとしての時間」という考え方です。

長時間残業が健康に有害であることは、もはや常識となっています。時間外労働が月45時間を超えると健康に悪影響を与えるおそれがあり、月100時間を超えると明らかに病気の発生と関連があるとされています。
つまり、月100時間を超える残業が続くと、脳血管疾患や虚血性心疾患、うつ病などが発生する危険が大きくなります。いずれも命を落としかねない重大な疾患です。もしも会社が訴えられたら間違いなく敗訴するでしょう。長時間残業のリスクを、社員も、上司も、会社も、十分に認識しなくてはいけません。
会社には業務による健康被害を予防する義務があります。当社では、毎月、産業医のところへ「高残業者リスト」が送られてきます。人事や労働組合も、長時間残業には目を光らせています。しかし、勤務時間を入力していないほとんどの管理職の社員は、この調査からすっぽりと抜け落ちているのが現状です。
管理職も出退勤時刻の入力を
昨年、当社では管理職の社員も出退勤時刻を入力するようにと通達が出されました。中には「時間管理をするのか」と反発した人もいるようです。しかし、それはまったく見当違いの意見で、有害な化学物質を扱う職場で「私は管理職なので健康被害を予防するための検診を受けません」と言うようなものです。
今回、改めて管理職の方(特に労働時間の長い方)に、出退勤時刻を入力するようお願いします。長時間労働は健康上のリスクであり、これを記録して会社に通知しておくことは、自身のリスク管理の上でとても重要です。また、会社が従業員の労働時間を把握することは、今さら言うまでもなく、社員の健康を守るために当然のことなのです。
「自分は管理職なので、残業時間なんかわかりません」などと言って、自分の労働時間も把握していないようでは、管理職失格です。
(この記事は、私が専属産業医として勤務している会社で、全社員に向けて毎週配信しているメールマガジンの内容を、ウェブ用に書き直したものです。)
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2005年3月17日 19時44分 #
昨年、「心の健康対策、企業に義務づけ」と大きく報道された労働安全衛生法の改正の問題は、しだいに議論が後退したのか、それとももともと報道自体が憶測だったのか、結局「義務づけ」とはならないようですね。
義務づけるとどのような(実務上の)問題があるのか、厚生労働省労働政策審議会安全衛生分科会の議事録を読むと、100時間という数字の妥当性や産業医の役割など大変興味深い議論がなされています。(http://www.mhlw.go.jp/shingi/rousei.html#anzen)
過重労働の大きな要因である長時間残業については、ただたんに残業が多いだけでなく残業代さえも支払われない、いわゆる不払い残業の問題もあります。労基署の目が厳しくなったとはいうものの、労基法違反で摘発されたことが大きく報じられるのは一部の大企業ばかり。実際には日本の企業の99.7%が中小企業なわけですから、結局、ちゃんと取り締まってますよというポーズに過ぎないのではないかと疑問に感じてしまうのです。
たとえ思い余った労働者が退職覚悟で告発したとしても、労基署の対応には強制力がないため残業代が支払われるとは限らず、結局泣き寝入りということもあるようです。
法定で残業代は25%割増が基本となっていますが、厚生労働省の試算では、企業にとっては、たとえ5割増しの残業代を払っても新たに人を雇うより安上がりという結果が出ており、これでは長時間残業が一向になくならないのも道理、労働者は本当に救われないなと思うのです。
(これを、今の法律は実際には残業促進法であるという人がいましたが、なるほどもっともです)
メンタルヘルスケアの重要性と同時に、こういった長時間残業がなくならない構造的な問題も何とかしなければならないのではないかと強く思うのですが、そのために自分に何ができるのか、いろいろと思い悩む日々です。
2005年3月18日 22時35分 #
こんにちは。
残業を本格的に無くそう・減らそうと考えると、結局は経営者の考え方を変えるところに行き着いてしまいます。この4月から施行される個人情報保護法のように、企業を動かすには法的な強制力が必要ですね。
大企業と中小企業では問題の正確も違ってくるのでしょうが、産業保健の現場にいる者としては、長時間労働による心身の不調の早期発見と適切な個別対応をする中で、上司や部門(ひいては経営者)に訴えかけていくしかないと考えています。
2005年3月22日 11時25分 #
お返事ありがとうございました。
これからも記事の更新を楽しみにしていますので、どうぞよろしくお願いします。