医薬品販売の規制緩和とドン・キホーテ騒動 (2)
夜間でもコンビニなどで医薬品を購入できれば、利用者にとって便利なだけでなく、軽症者の医療機関の受診も抑えられ、医療費抑制にもつながる。政府でも規制緩和のための審議が進められているが、圧力団体の反発も強く議論は難航している。
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夜間救急外来を受診する患者さんには軽症者が多い
夜間救急外来を訪れる患者さんの多くは軽症者です。わざわざ病院に来るほどでもないのに、夕方になると薬局が閉まってしまうため、しかたなく病院を受診する人たちです。そのため救急外来はいつもごったがえし、待ち時間が長くなるばかりか、日本全体の医療費もかさんでしまいます。
薬剤師がいないと市販薬の販売はできない
薬局で売られている風邪薬や胃腸薬などのことを、一般用医薬品 (市販薬・大衆薬・ OTC 薬) といいます。「病院にかかるほどでもないちょっとした症状のときに、自分のお金で薬を買って自分の面倒は自分で見よう」というのが市販薬の考え方です。
市販薬が売られている薬局には、必ず薬剤師がいなくてはなりません。薬の安全な利用や副作用などについて、購入者に情報提供を行うことが薬剤師の主な仕事です。
現実には薬剤師は必要とされていない
しかし現状では、この役割はあまり機能しているとは言えません。多くの購入者にとって、薬の副作用について説明をうけることよりも、欲しい薬をすぐに手にいれることのほうが優先されます。中には薬剤師の説明をうっとうしいと思う人もいて、そんな事情からか、薬剤師も積極的に説明を行うことは少なくなりました。
また、棚に並ぶ多くの薬剤の中から、もっとも適切な商品を選ぶのも薬剤師の役目ですが、患者の体に触れての診察や検査などは行えないため、せいぜい「セキが出るときはこっち」、「鼻水のときはこれ」といった選択しかできません。
薬剤師の手を借りなくても、パッケージにわかりやすく効能や副作用について記載したり、店内の掲示を工夫すれば、欲しい薬を選ぶことはできます。市販薬の小売りに関して言えば、薬剤師の存在意義は乏しくなっているというのが現実です。
コンビニでも医薬品が買えるようになる ?
現在、政府の総合規制改革会議では、コンビニなど一般小売店でも医薬品販売ができるようにするための審議が続いています。
ところが、日本薬剤師会などの圧力団体の反発を受け、審議はなかなか進んでいません。薬剤師不在の店舗で医薬品を販売することに対して「副作用など安全面で不安がある」、「安易に市販薬に頼ることで医療機関の受診が遅れてしまうのではないか」という指摘があります。
「用法・用量を守って正しくお使いください」
先ほども述べたように、市販薬の販売において薬剤師の存在意義は薄くなっています。正しい使用法や副作用についての情報提供や、良くならないときは早めに医療機関を受診するようにといった指導は、薬剤師がいなくとも、医薬品メーカーや販売店の努力で行うことも十分に可能でしょう。
市販薬の役割は「自分の面倒は自分で見て、医療機関の不要な受診を抑える」ことですから、市販薬の使用は購入者の責任で行われるべきです。現実には機能していない薬剤師の役割を持ち出して、規制緩和に反発するのでは、既得権擁護との批判をうけるのも当然のことです。
夜間の医薬品販売を行うための方策
それでは、夜間の医薬品販売を行うにはどうすればよいのでしょうか。それについては (1) 薬剤師がいなくても販売できる医薬品の品目を定める、(2) 薬剤師がいなくても販売できる業者を許可制にする、という制度をつくるべきでしょう。
安全性が高く、なおかつ利用者の需要が高い商品に販売を限定することで、利用者の安全確保や既存の薬局との差別化もはかれます。また、医薬品の管理体制については、販売業者を許可制にすることで一定の水準を保てるのではないでしょうか。
テレビ電話はグッドアイディアだが、やはり法律違反
さて、話題となったドン・キホーテのテレビ電話を用いた販売と、無料配布について個人的な見解を述べたいと思います。
テレビ電話を用いた販売はなかなかのアイディアです。ディスカウントショップでの仕事程度なら、薬剤師がその場にいなくても、テレビ電話で十分なのです。しかし、薬剤師の常駐を定めた薬事法に照らし合わせてみれば、法律違反を指摘されるのはもっともでしょう。
「無償配布」は本当に利用者のためのものか?
もうひとつ、「急な腹痛などで緊急性の高い客に1晩分の医薬品を無償で提供する」ことについては賛成できません。特に問題視すべきなのが「無償配布」という部分です。本来なら医療機関を受診すべき患者が、無料という言葉に踊らされ、市販薬で無理をするのではないかと心配です。
「緊急性の高い客」はそもそも薬局ではなく医療機関を受診すべきですし、市販薬が役に立つ「緊急な」場面は少ないでしょう。軽い頭痛や、歯痛、虫さされくらいでしょうか。
本当に客の利便性やサービスを考えているなら、夜間にもきちんと薬剤師を配置し、正規に医薬品を販売するべきです。ただお役所に反発してみるだけという姿勢や、話題作りのためそれを考えなしに賞賛するのはどうかと思います。
購入者の利便性と今後の医療政策を見据えた議論を
「夜間でも薬が買える」というのは購入者にとって利便性が高い上に、軽症者の医療機関の受診も抑えられ、夜間救急病院の待ち時間も減り、医療費全体の削減にもつながります。
この騒動が「乱暴な業者」と「既得権を擁護するお役所」の対立劇で終わらず、総合規制改革会議での議論が今後も継続されることを望みます。
参考 :
厚生労働省の見解 (規制緩和を進めるべき)
経済同友会の見解 (規制緩和を進めるべき)
日本医師会の見解 (おおむね反対。医薬品販売の規制緩和には慎重な立場)
日本薬剤師会の見解 (規制緩和反対の立場)
日本民主医療機関連合会の見解 (規制緩和反対の立場)
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2003年9月14日 19時36分 #
身近な問題なだけに、整理していただけてとても助かりました。
違法性の議論、行政の議論、経済とビジネスの立場からの意見、いろいろと分けて考えないと、なのですね。
先日調剤薬局で「おくすり手帳」なるものをもらいました。
処方の履歴を記入し、他の医療機関受診や薬局での購入の際に医師や薬剤師に見せ、役立ててくださいというもの。
自己責任による情報の管理と、限定された情報の取扱者(薬剤師、医師)というメタな話にも読み替えることができるのかな?なんて思ったりもしました。