教授からの呼び出し
突然、内科の教授から呼び出しがありました。2年前に東大からやってきた教授は、臨床も研究も一流を要求するバリバリのやり手。大学院生の僕は、医局の手駒のひとつなのですが、産業保険の道をすすみたいというのは、内科の中では相当の異端児なわけで(笑)。
2週間ほど前の面接では「もう1年間研究を続けなさい。ほら、そこでイエスと言いなさい」とか言われちゃったし、今日は何だろうかとビクビクしながらも、言い負かされずになんとか説得しようと、手帳を3ページも使ってメモを用意したりして、ドキドキしながらその時を待ちます。
ところが部屋に入ってみると、教授はニコニコしています。なんでも昨日、近くの製鉄所の病院の院長と会合があったそうで、そのときに僕のことを紹介してくれたのだとか。その企業は日本でも最大規模の製鉄所で、病院が併設されているため、産業医としても臨床医としても仕事ができる理想的な環境だと教授は言います。
確かに、従業員の主治医と連絡が取りやすいということは、産業医として活動する上で大きなメリットです。週に何日かでも病院で勤務することができれば、臨床医としての感覚も失うことはないでしょう。
しかし、教授の口ぶりからは「産業医はデスクワークばかりでつまらない仕事だ」という本音がうかがえます。「関連病院のひとつに医局員を派遣したい。医局の関連する産業医を地元の大企業に送り込みたい」という思惑も見え隠れするように感じられました。
教授は「今すぐにでもそこに決めてしまいなさい」という勢いでしたが、そこで押されて「ハイ」と言うほど今日の僕は弱気ではありません。最も大切なことは、教授とか医局のことではなく、そこで自分が役に立てるかどうかということです。いずれにせよ、さっそく病院長に連絡を取り、現場で仕事をしているスタッフとも話をさせてもらい、その上で判断しようと思います。
幸いなことに、学位取得まで時間的な余裕があります。ひとつの話に飛びつくのではなく、他にも何社か売り込みをかけようと計画中です。与えられた仕事よりも、自らつかんだ仕事のほうが、達成感は大きいでしょうから。
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